
奇襲が裏目!なぜ広島の新井監督は「自分のミス」と猛省のホームスチールを仕掛けたのか…「2秒50」の投球時間と「腹に据えかねるものがあった」阪神の藤川監督との“遺恨”が背景に?!
広島が18日、甲子園での阪神戦に1-3で逆転負けを喫して連敗した。流れを変えたのが、6回二死三塁から中村奨成(25)に仕掛けさせたホームスチール。伊原陵人(24)が足を上げて一度止める2段モーションの隙を狙ったものだが、捕手の坂本誠志郎(31)に冷静に対処されてアウトとなり、その裏に代打攻勢から阪神に逆転を許した。2位広島と首位阪神のゲーム差は1.5となった。
3戦目にしてメンバー交換の際に両監督が目を合わせる
奇襲が裏目に出た。広島が1-0で迎えた5回だ。二死三塁で打席には4回に先制の犠飛を決めていた4番の末包。カウント0-1から左投手の伊原が、三塁走者を気にせず、ゆっくりと右足を上げたタイミングを狙い、大きくリードを取っていた三塁走者の中村奨がホームスチールを仕掛けたのだ。
投球は外角高めへのストレート。末包が打席を外して走路を作った。タイミングは間一髪だったが、滑り込んできた中村の足がホームに着くよりも先にコリジョンにならないように冷静にポジショニングを取った坂本がタッチした。中村は苦笑いを浮かべ、三塁ベンチでは、新井監督が拍手で、アウトになった中村の走塁を称えていた。
スポーツ各紙の報道によると、試合後に新井監督は「事前にチャンスがあるということだったんで、思い切っていったんだけど、私のミスです。自分のミスです」と、采配ミスを認め、藤川監督は「どのチームも狙っている」と、驚きではなかったことを口にしている。坂本は、中村のリードが大きかったことで警戒心を持ち、スタートと同時に阪神ベンチから走者のスタートを知らせる大きな声があがったため、ホームスチールへの準備ができていたという。
現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人は、「ホームスチールを仕掛ける場面ではなかった。あれでゲームの流れを変えてしまった」と厳しく指摘した。「打者が4番でツーアウト。しかも、走者が見えない左投手で、伊原は足を止めて投げる二段モーション。阪神バッテリー、ベンチが打者に集中している場面で、ホームスチールを仕掛ける条件が揃っている場面でもあった。だが、末包は佐藤と打点王を争っている4番打者。じっくりと打たせて良かったし、もっといえば中村はスタートをもうワンテンポ早く切れたと思う。リードする際、ライン上に寄ってはいたが、もっと寄って坂本にリードの距離感がつかめないように細心の配慮もしておくべきだった。ゲームの流れを考えると、無謀な作戦だった」
伊原は右足を一度止めてタメを作る2段モーション。このときの投球モーションは「2秒50」もかかっていた。計算上でいけば捕手が返球する際を狙うのではなく、正当なタイミングでホームを狙うホームスチールが可能な条件は揃っていた。
新井監督が「事前に聞いていたチャンス」というのは、この伊原のモーションにかかるタイムのデータのことだろう。
だが、この大胆な奇襲の失敗でゲームの流れが変わった。
その裏、藤川監督は、4安打1失点の好投を続けていた伊原に迷わず、この日が、22歳の誕生日である前川を代打に送った。ハッピーバースデーがライトスタンドから流れた後、2球目で追い込まれながらも、玉村のチェンジアップに反応して、一、二塁間を破るヒットで出塁した。代走に熊谷。
近本の二ゴロでスタートを切っていた熊谷が、得点圏へ進み、中野が三遊間へ流し打ちを決めた。この打球をレフトのファビアンがファンブル。処理に戸惑っている間に熊谷が同点ホームを踏んだ。「拓夢さんが良い形で回してくれて同点に追いついてくれたので、自分の打席に集中した」という続く森下が、レフトへ勝ち越しのタイムリーを放ち、一気に試合をひっくり返した。
森下は守備でも光った。4回に先制点を失い、さらに二死三塁から坂倉のライトへの大飛球をフェンスにぶつかりながら、つかみとるファインプレーでチームのピンチを救っていた。