
井上尚弥は真吾トレーナーが「バランスが良くパワーを感じた」”最強挑戦者”アフマダリエフを倒せるのか…「総合力で上」と豪語の敵陣営は会見でマネージャーが”ささやき戦術”で情報統制?!
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)に9月14日、名古屋で挑むWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)が1日、横浜の大橋ジムで公開練習を行い、「井上が私から逃げて避けてきたのは事実」「総合力は私が上」「弱点がある」などと豪語した。視察した井上真吾トレーナー(54)はパワーとバランスの良さを認め警戒しつつも「すべてにおいて(総合力の)円(スケール)はこっちの方が大きい」と自信をのぞかせた。井上は最強挑戦者を倒せるのか。

頑丈なアフマダリエフ対策はタパレスとのスパーで万全
井上尚弥が「キャリア最大の敵」と呼んだアフマダリエフは”最強挑戦者”にふさわしい姿を披露した。シャドーとミット打ちを軽く1ラウンドずつ見せただけだったが、ただものでないことを知らしめるには十分だった。ジャブ、ジャブワンツー、アッパー、右フック、4連打のコンビネーションと、どのパンチを打っても頭の位置がほぼ動かず、しかもパンチを放つ際のフォームも軌道も正確だった。しっかりと肩を入れて手首を効かせて打つパンチだ。
アフマダリエフは、2015年の世界選手権で銀メダル、リオ五輪で銅メダルを獲得した元トップアマ。ウズベキスタンの国家警備隊に所属していて「従軍はしないが、合宿や試合に出ることが仕事」と、国家プロジェクトとして結果を残してきた。今なお所属はそのままで「家族、軍、国…すべてが支えだ」と、東側諸国のアスリート特有のモチベーションを明かしている。
そのアマのベースがあるからすべてのパンチが基本に忠実で動きに無駄がない。
全体的に流して手の内を見せながったが、時折、力を入れて打つ右フックと、左ストレートには危険な匂いを漂わせた。
米国のパームスプリングスでキャンプを張り、計100ラウンド以上のスパーリングを消化してきた。早すぎる来日には試合勘が鈍るリスクがあると見られていたが、スパーリングパートナーも一緒に来日しており、14から16ラウンドの追加スパーリングも日本で行っていて「調子がいい。時差ボケも解消した」と胸を張った。
視察した真吾トレーナーも警戒心を強めた。
「シャドーを見て基本がしっかりとしている。シャープさよりパワーも感じた。右フックが印象的。バランスが凄くいい。アマのベースがしっかりしている。ステップワークを含めた足?そこには特別なものは感じなかった」
スピードやキレはなかったが、その頑丈な肉体と、太い腕、なによりナチュラルなパワーが目についた。
「上半身ががっちりしている。骨格に見合った腕周り。しっかりと練習しているんだなと思った。耐久力がある?そうかもしれない」と真吾トレーナー。
プロ戦績は15戦14勝(11KO)1敗。これまでKO負けはおろかダウン経験もない。筆者も、この挑戦者が早いラウンドにダウンするイメージは持てなかった。だが、真吾トレーナーは、こうも言った。
「イメージ通り、トップアマ。そういう選手というのはわかっている」
アフマダリエフの頑丈さとパワーに対抗するために、大橋会長が7月下旬からスパーリングパートナーとして呼んだのが、2023年12月に井上と対戦して10回KO負けした元WBA&IBF王者のマーロン・タパレス(フィリピン)だ。タパレスはアフマダリエフを2-1判定勝利で下している。そのタパレスは、SNSでファンが「こんなにでかくて大丈夫?」と話題にするほどの体格で来日した。
「岩のように骨格がしっかりしている」と真吾トレーナーが評するタパレスの肉体は、仮想アフマダリエフにピッタリどころか「試合前(のアフマダリエフ)とは比較にならない」ほど強く、しかも動ける体でやってきたので「気をつけなきゃ危ない緊張感を持ってスパーができた。めちゃくちゃいい練習ができた」という。
さらに13年ぶりの出稽古を帝拳で敢行した。その様子は今日2日の午前10時から「Lemino」で期間限定独占配信される密着ドキュメント「NAOYA INOUE -NO LIMITS- 井上尚弥vsムロジョン・アフマダリエフ」に収められているそうだが、WBOアジアパシフィック・フェザー級王者で、WBO同級4位の藤田健児、日本バンタム級王者でWBA世界同級4位の増田陸と拳を交えた。
「精神面でのコントロール。(ヨソの)ジムでも同じ体でできるか。いろんな意味でいい確認ができた」
真吾トレーナーには万全の準備を終えたという手応えがある。