
え?9回二死満塁でセーフティースクイズ?笑えない“チグハグ”なミス連発の中日が今季初のサヨナラ勝利をつかめた理由とは…松山の“魂の20球”&木下の“三味線”と井上采配
中日が4月30日、バンテリンドームでの阪神戦で延長11回に今季初となるサヨナラ勝利を収め、勝率5割復帰に王手をかけた。先発左腕の大野雄大(36)が足がつって6回に途中降板するアクシデントがあってリードを奪われたが、その裏に代打の高橋周平(31)の2点タイムリーで追いつき、9回一死一、三塁のピンチも守護神の松山晋也(24)が連続三振で切り抜けた。走塁ミスなどチグハグな攻撃が目立ったが、延長11回に代打のオルランド・カリステ(33)がサヨナラ犠飛を決めた。
「とっておき」の代打カリステがサヨナラ犠飛
もう試合時間は4時間を大きく超えていた。
延長11回一死一、三塁。途中出場のロドリゲスの打席で井上監督は代打カリステを告げた。
「代打を出す順番であったり、誰をどこで出すのかは難しい。カリステはどこか延長に入ってチャンスで出したい(と考えていた)とっておき(の代打)。ここは決断の時と思って出した」
マウンドには阪神の7番手、ビーズリー。カリステは「みんな初回から全力で戦っていた。最後の最後でチャンスで回してくれた。絶対に強い打球を打って(三塁走者の)細川さんを返そうと思っていた」という。 カウント2-2からの5球目。154キロの甘いストレートをセンターへライナーで弾き返した。近本が下がって捕球せざるを得なかったサヨナラ犠牲フライ。バンテリンドームが歓喜に包まれた。
井上監督が「取って取られての息をのむ両軍の戦い」と振り返った激闘の中で、サヨナラ勝利を呼び込んだのは新守護神、松山の魂の20球だった。
4-4で迎えた9回。先頭の前川に右中間フェンス直撃の二塁打を許したが、続く坂本にはフォークを連発してバントをさせなかった。2球続けて空振りさせ、阪神ベンチはバスターに切り替えてきたが、またフォークで空振りの三振。代打糸原にレフト前へつながれ一死一、三塁のピンチを作ったがそこからが凄かった。代打木浪の初球に盗塁を許して二、三塁となったが、3球で1-2と追い込んだ。156キロのストレートをファウルにされ、勝負球のフォークはボールとなった。木下は、ここで再びフォークを要求するときのミットを下から構えるアクションを見せた。だが、これは木浪や阪神ベンチにフォークだと思わせるための“三味線”だった。
バッテリーが選んだのはアウトハイの154キロのストレート。木浪のバットは空を切った。
続く近本は154、155キロのストレート2球で追い込んだ。だが、ここから粘り強いのが近本である。3球目のフォークを見極められ、4球目のストレートはファウル。ここからフォークを連投したが、近本はハーフスイングでバットを止めた。
フルカウントとなって7球目。松山―木下のバッテリーが選んだのはストレートだった。インコースにズバっと決まる155キロのストレートに近本は微動だにできなかった。マウンド上で松山は2度雄叫びをあげた。
井上監督は巨人に移籍したマルティネスに代わる新守護神を絶賛した。
「昨日も投げて、ストッパーの2連投、3連投は当たり前なんでしょうけど、いきなり初球をパカーンと(前川に)ツーベース。それはたぶん頭になかったとは思うけど、そこで踏ん張るのが彼の常に全力という真骨頂を見せてくれた」
松山の鬼気迫る投球はチームに目に見えぬ力と流れを注入したのである。