
「心臓に悪い走りで申し訳ない」レッドブル角田裕毅が10位入賞を果たしたマイアミGPの舞台裏…いかにしてピットレーン速度違反の5秒ペナルティを克服したか
角田は28周目でピットインし、ハードタイヤに交換してアタックをかけた。しかし、直後の29周目にハースのオリバー・ベアマン(19、英国)がメカニカルトラブルでストップ。バーチャル・セーフティー・カー(VSC)が導入された。
決勝で2度目となるVSCの影響で、フェラーリのルイス・ハミルトン(40、英国)とザウバーのニコ・ヒュルケンベルグ(37、ドイツ)の先行を許した角田を、さらなる試練が襲った。32周目になってウッド氏がこう伝えた。
「ユウキ、ピットレーンのスピード違反で5秒ペナルティーだ」
ピットレーンに進入する際に、角田はタイムロスを最小限にとどめようと、ギリギリまでブレーキを我慢した。しかし、タイミングがわずかに遅れたためにタイヤがロックアップ。ピットレーンの制限速度80kmを5.6kmオーバーしていたとスチュワード(審議委員)が確認し、レッドブル側へ通達された。
5秒のタイムペナルティーが科されたなかで、状況は10位に浮上した角田と11位で猛追してくるハジャーが、入賞をかけた一騎打ちに入った。ハジャーの姿は視認できない。それでも5秒以上の差をつけてチェッカーを受けなければ順位が入れ替わる。
53周目になって、“見えざる敵”のハジャーが4秒9差に迫ってきた。
「ハジャーがペースをあげてきている。全力を尽くすんだ」
緊急事態を告げるウッド氏の無線に、角田もやや苛立つ口調で返す。
「わかっているよ、やっているよ」
そして、冒頭で記した残り2周でのエンジンモードの切り替えが奏功した。ウッド氏に代わって無線を取ったレッドブルの代表、クリスチャン・ホーナー氏(51)が10位入賞と1ポイント獲得をねぎらった。
「最後数周、いい走りだった。よくやった」
そして、角田はこんな言葉でホーナー氏やウッド氏に謝罪している。
「心臓に悪い走りで申し訳ない。次はもっとやるよ」
F1の公式サイトは、レース後の角田のコメントも伝えている。今季2戦目までのチームメイトで、角田がレッドブルに緊急昇格した後は何かと比較されてきたハジャーの追い上げをあげながら、角田はこう語っている。
「5秒のタイムペナルティーは明らかに僕のレースを困難なものにしたし、昔のチームメイトが僕のレースを楽にしてくれたわけでもなかった。最後の10周で彼はかなりペースを上げ、僕も十分にプッシュした。本当に大変だったけど、やるべきことをやるだけだったし、最後の最後に自分のペースを最大限に出せたと思っている。ポイントを獲得できたのはうれしいけど、まだまだ同時に自分のペースには満足していない。チームとしても、僕だけでなく、全体的なペースで苦戦していたと思う」
英国のモータースポーツ専門メディア『RACEFANS』は、0秒168差で2度目のポイント獲得を逃したハジャーのコメントを伝えている。
「最後のラップではギャップを縮めたいと思いすぎて、あちこちでミスをしてしまった。フラストレーションが溜まっているし、ちょっと落ち込んでいる」
マイアミGPのスプリントで6位に入賞し、獲得した3ポイントも加えて合計9ポイントとした角田は、ドライバーズランキングで11位に浮上した。操作が難解とされるマシンへの適応を可能な限り早めながら、16日に開幕する次戦のエミリアロマーニャGPからスタートする、舞台をヨーロッパに移した戦いに臨むことになる。