• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「挑戦者はサムライだった。ずっと怖かった」井上尚弥に迫っていた知られざる“第2のピンチ”を真吾トレーナーが明かす…「酸欠状態になるのが…」
インターバルで井上尚弥に的確な指示を送る真吾トレーナー(写真・山口裕朗)
インターバルで井上尚弥に的確な指示を送る真吾トレーナー(写真・山口裕朗)

「挑戦者はサムライだった。ずっと怖かった」井上尚弥に迫っていた知られざる“第2のピンチ”を真吾トレーナーが明かす…「酸欠状態になるのが…」

 フィニッシュは8ラウンドだった。
 距離を詰めてからのコンビネーションブローでロープへ吹っ飛ばすと炎の連打を浴びせる。カルデナスはぐらつき動きが止まった。右アッパーが入り、猛ラッシュを続けたところでレフェリーが間に入ってTKOを宣告した。だが、このストップにひと悶着があった。カルデナスは必死にレフェリーに何かを訴えていた。
 試合後の公式会見でカルデナスが明かしたところによると、「大丈夫、大丈夫」と、試合続行を訴えたが、レフェリーは「私は、君自身を救わないといけないんだ」と、試合をストップした理由を説明したという。
「私はクソっと思った。がっかりした。でもこれがボクシング。レフェリーの判断について議論するつもりはない」
 カルデナスは、そう未練を口にした。
 2023年7月、井上にスーパーバンタム級のWBC&WBOのベルトを8回TKOで奪われた現WBC世界フェザー級王者のスティーブン・フルトン(米国)もSNSで「ストップは予想していたが、シンプルに少し早すぎた」とレフェリーの判断に物言いをつけるなど、早いか、正当かが、物議を醸した。
 真吾トレーナーはレフェリーの判断に敬意を示した。
「一番すげえなと思ったのはレフェリーですよ。ストップが早いという人もいるみたいですが、一番近くで見ていてカルデナスのダメージがわかっていて本当の中立の立場で適正に止めた。“あなたの命を救うため”と説明したそうですが、レフェリーは、感情抜きで冷静に見てその言葉が出たのでしょう。すげえレフェリーですよ。ボクサーはファイターだから“止めないでくれ。やれる”と絶対に言う。ましてカルデナスはサムライでしたから。でもあと一発で事故が起きる危険性があるんです。レフェリーはレフェリーの仕事をやり遂げてくれました」
 井上の名参謀は、その論争に終止符を打ち、そして勇気ある挑戦者を「本当に強かった」と称えた。
「最後も“嫌倒れ”ではなかった。最後まであきらめず、試合を捨てなかった。日本でいうサムライですよ。この一瞬にかけてきた感じだった。一獲千金の大勝負ですからね。それが伝わってきた」
 スーパーバンタム級のフレームを持ったカルデナスのフィジカルも、注目に値するものだった。
「強い部類ですよ。ここまで30戦戦ってきて何人かタフな相手がいました。ライトフライ級の時も、打たれ強い選手はいました。心が折れて終わる選手もいれば、技術では勝てなくとも何が何でもKOされないと頑張る選手もいました。カルデナスは、トップに匹敵するタフさだったんじゃないですか」

 

関連記事一覧