
佐々木尽が日本のボクシング界の歴史を変える“世紀の番狂わせ”を起こすこれだけの理由…幸運の白蛇まで現れる
ただ被弾覚悟の無謀な玉砕戦はするつもりはないという。
「今回は、パンチはもらわない作戦。ガードの上からでもノーマンはパンチがあるのでダメージになる。一切、もらわないボクシングをする」
また「倒すだけでなく判定でも勝てるように12ラウンドもやっている」との準備も怠っていない。
“世紀の番狂わせ”の例として、佐々木が口にしたのは「ボクシングを始めた時の憧れだった」というマイク・タイソン(米国)が1990年に東京ドームでジェームズ“バスター”ダグラス(米国)に10回KOで敗れた試合ではなかった。小学校5年から中学3年までやっていた柔道で「超攻撃的スタイルが大好きだった」という五輪2連覇の阿部一二三が、まだ高校2年の時に、五輪銅メダリストの海老沼匡を破った試合をあげた。「攻撃が最大の防御的な柔道」をした阿部に自らの勝ちパターンを重ねたのかもしれない。
吉兆もあった。
6月2日に、ジムの玄関先に、コーンスネークという白蛇が突然現れたのだ。白蛇は「幸運を運ぶ使者」として知られる。すぐに警察に通報して保護してもらったそうで、佐々木自身は、直接は見ていないのだが、ジムの関係者に写真を見せてもらった。
「ジムに幸運をもたらしてくれる。“心配しなくて大丈夫だ、勝てるから“と、言いにきたのかな」
試合用のトレーナーのロゴやガウン、トランクスは、グリーンを基調にしたもので揃えた。
「蛇年生まれで年男」の佐々木がネットで検索したところラッキーカラーがグリーンだったため、縁起を担いだ。他には「ラベンダー」などのワードも出てきたため、「紫、金」をあしらっているという。またカットマンを依頼しているトレーナーからは吉兆の「虹の写真」が送られてきた。
5日前にまた夢を見た。3ラウンドにスリーノックダウンを奪われて負けたという。
控室に向かう通路で「負けたんですか?終わったんですか?」と聞いたところで目が覚めた。
「本当に悔しくて。やばかった。でも夢で良かった。こんな思いを絶対にしたくない。もう1回負けているのでリベンジです」
何事もプラスに捉えられるのが佐々木の良さだが、一方で「怖さはある。負けたらどうしようとか、怪我とか」との本音も漏らした。
だが覚悟にブレはない。
「気持ちのなかでは戦争。死ぬか生きるか。の気持ちがある。殺すか、殺されるか」
ジムがあるJRの八王子駅の改札前に巨大な3枚のポスターが掲げられ、寄せ書きのコーナーが設けられている。15日には、そこに応援のボップアップストアがオープンし「佐々木尽メロンパン」も販売される。
「本当に嬉しい。寄せ書きには、“絶対勝てると思っている“、“絶対大丈夫”“いける”みたいなシプルなものが多いのでそれが嬉しい」
町をあげての応援ムードが最も大きい“番狂わせ”の可能性を示す理由なのかもしれない。