
横浜DeNAで藤浪晋太郎は変われるのか?制球難克服テーマを「シンプルに。考えすぎるな」…古巣阪神の佐藤輝明に「力勝負したい」と宣戦布告
萩原本部長はその上で、先発右腕のトレバー・バウアー(34)が5連敗を喫するなど不調に悩み、さらに中継ぎの入江大生(26)が右上腕部神経障害で、ローワン・ウィック(32)が上半身のコンディション不良で離脱した投手陣の現状に言及した。
「(藤浪には)基本的には長いイニングを投げてもらいたいと思いますけれども、状況に応じていろいろなポジションをこなせる投手ですし、先発はもちろんリリーフでも、どこでもいってもらいたいと期待しています」
39勝41敗5分けと借金2を抱える横浜DeNAは阪神、巨人に次ぐ3位。阪神には9.5ゲーム差をつけられているが、今シーズンの目標にすえるリーグ優勝はまだまだ狙えるとして、巻き返しへの切り札として藤浪に白羽の矢を立てた。
そして、チームを挙げての熱意が、交渉の席で藤浪の胸を打った。
背番号27、推定年俸5000万円で新天地の一員になり、この日に支配下選手登録が公示された藤浪は、古巣・阪神からのオファーはなかったと明かした上で「心機一転、頑張ろうと思っています」と横浜DeNAでの抱負を語った。
「オファーをいただいたなかで一番熱を持っていたというか、藤浪晋太郎という選手が本当に必要だ、という熱を体現していただく言葉をたくさんいただいた。その情熱に応えたい、という思いでお世話になろうと決めました。必要としてくださる、というのはすごく大事なこと。お話しさせていただくなかで、そこを強く感じました」
起用法については三浦大輔監督(51)と話し合って決めるが、藤浪自身としては先発でもリリーフでもフル回転していく覚悟を決めている。
「チームに貢献するのが一番なので、チームの事情によって両方できれば。まずは数字で貢献したいし、数字以外にも31歳という年齢から、自分よりも若い選手たちへ背中や態度を見せるところでも貢献できれば。まだまだ優勝を狙える位置にいると思うし、逆転へ向けたピースのひとつになれるように頑張っていきたい」
3Aタコマで最後に登板したのが6月11日。自由契約になった後は、代理人のスコット・ボラス氏(72)が所有する、ブルペンも完備した米カリフォルニア州の練習施設で投げ込みなどを行ってきた。コンディションは問題ないと藤浪は言う。
「体の状態としてはしっかりと仕上げてきたので、あとは1カ月ほど試合から離れているので、そこだけを詰めていければと思っています」
今後は二軍で実戦経験を積み、試合勘などを埋めていく。さらに藤浪は、約2年半にわたってアメリカ球界から学んだものをこう説明した。
「データを非常に重視するなど、いろいろな取り組みをしているチームが多いなかで、共通して言われたのが『Be Simple』でした。いろいろなデータ、いろいろな見方があるからこそシンプルになれ、野球という難しいスポーツを難しく考えるな、と言われたのは、今でも自分のなかにすごく印象的なものとして残っています」
考えすぎるな、イコール、制球に悩み苦しんだ過去との決別とも受け取れる。生まれ変わった右腕がどのような変化を遂げて、約3年ぶりに日本のマウンドに立つのか。オールスター戦明けの26日と27日には、甲子園球場での阪神戦が待つ。ここに藤浪が間に合い、佐藤との対決が実現すれば、ひときわ大きな注目を集めることになる。
(文責・藤江直人/スポーツライター)