
井上尚弥がアフマダリエフ戦の舞台裏を激白…「誰が衰えているって?」発言の“本当の意味”とクロフォードvsカネロ戦から受けた啓示…フェザー級で通用するスタイルを示したにもかかわらず…
プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が15日、横浜市内の大橋ジムで一夜明け会見を行った。井上は14日に名古屋のIGアリーナでWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)を3-0判定で下した。試合後ファンに「誰が衰えたって?」と問いかけた言葉の真意や、スーパーミドル級の4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(35、メキシコ)を3-0判定で下したテレンス・クロフォード(37、米国)の戦いを参考にしたことなどの裏話を明かした。
「滑ってました?」
フルラウンドを戦ったというのに傷ひとつない綺麗な顔をしていた。
前夜から一睡もしていない。トップランク社の総帥ボブ・アラムCEOに「コンプリート(完璧)ファイト」と評価された試合の映像も見返した。
「この試合にかける思いが強かった。作戦通りに勝つことができてホッとしている。肉体的ダメージはほぼゼロ。日々の精神的ストレス、精神的疲れをしっかりと取りたい」
被弾がなかったわけではなく、最終ラウンドの終了間際に右フックをもろに浴びたが、世界最高レベルの試合の基準で言えば、ほぼ被弾ゼロと言っていい。
ご褒美の名古屋メシは、試合前に食べていた。
試合当日の昼食に名物のひつまぶしを用意してもらったというのだ。
もともと消化によくスタミナの源となるウナギは、世界中にどこにいっても試合前の井上の勝負メシ。ただ前日計量から直後、夜、当日朝、昼と4回食べる食事の量を「若干減らした」。スピードを生かしたボクシングが作戦だったため、当日体重の増加を約6.2キロプラスの61.5キロに抑えた。過去最重量は1月のキム・イエジュン戦の62.9キロで約7.6キロ戻しだったが、1キロ以上軽いモンスターでリングに上がっていた。
ダウンシーンもなくKO決着できなかったが、海外メディアに高く評価された。
「海外のメディアやファンはよく見てくれている。KOだけでなく内容。判定でもいい試合は評価してくれている」
そして何より会場につめかけた1万6000人のファンに感動を与えた。
「たぶんあの中で一番楽しんでいたのは僕。ということは見ている人も楽しめたんじゃないか、と率直に思う」
ヒリヒリした最高峰の技術戦だ。
最後まで打ち終わりや「自信過剰となり打ち急ぎいだ後」の隙に一発を狙っていることを「ヒシヒシと感じた」という。
それでもアフマダリエフは、過去最強だったのか?と聞かれ「うーん、どうかな」と、イエスとは言わなかった。
「倒し切ることができなかった。あれだけの技術戦になったし、フルトンとアフマダリエフは、僕がスーパーバンタム級に上げた時点での2団体統一王者の2人。そういった選手が上位に入ってくる」
井上をフルラウンドに渡って警戒はさせたがピンチに陥れることはできなかった。それが最強とは感じなかった理由だろう。
前日の試合後会見で聞けなかった質問をぶつけた。
リング上からファンに「誰が衰えたって?」と2度問いかけた言葉の真意だ。
「滑ってました?」
ジョークを交えて井上がこう説明した。
「(衰えの声が)どっかで?レミノのCMを見て下さいよ。どっかじゃないですよ(笑)」数発ちょっと被弾するシーンがあったり、これだけ31戦やって、2度ダウンがあり、それだけで、衰えただの。ピークが過ぎただの。そんなことを言われ放題なので(笑)」
独占無料ライブ配信したLeminoが地上波で流した“煽り映像”は、5月のラモン・カルデナス(米国)戦のダウンシーンから始まり「衰えた」「ピークを過ぎた」などのSNSでの書き込みが画面に流れた。そういう声への反抗心はあった。
結果として、それに対するアンサーがアフマダリエフ戦の12ラウンドだったわけだが、「衰えていないこと」をアピールすることは意識から切り離していた。
「それを見せつけたいがためのあの試合じゃない。アフマダリエフにしっかりと勝つ、作戦通りの戦いだったので、そういった意味で、まだまだこれからだぞ、とは見せられたんじゃないか」