「復活したというよりは新しい鹿島が生まれた」アントラーズを復活Vさせた就任1年目の“優勝請負人”鬼木監督の哲学とは?
新監督の言葉は、チーム内に大きな化学変化を引き起こした。
小学生年代から鹿島のジュニアに所属。トップチーム昇格後の2019年夏にベルギーのシントトロイデンへ移籍するも、無冠が続く状況に苦しむ古巣の力になりたいという思いが高じて2022シーズンに復帰。リーグ戦で全38試合に出場した今シーズンを含めて、公式戦でほぼフル稼働してきたFW鈴木優磨(29)が言う。
「正直、これまでは負けた試合の責任を僕が一番背負っていた。それが今シーズンはオニさん(鬼木監督)から『負けたときの責任は自分が取るから、思い切ってプレーしろ』と言われて。(川崎で)あれだけ勝ってきた監督だし、説得力というものがめちゃくちゃあった。僕たちもついていくだけだったし、今までの鹿島が復活したというよりは、新しい鹿島が生まれたと思っています」
厳しさを前面に押し出したアプローチもあった。鈴木が続ける。
「点を取った翌週の最初の練習で、いきなり怒られるんですよ。オニさん自身が妥協を許さないし、そこへ僕たちが納得するとかしないとかではなく、もうやるしかない。やらなかったら普通にメンバーから外される。そこに全員が危機感を抱くし、出られない選手は何くそ、という気持ちにもなる。チームを現状に満足させずに上を目指させ、同時にチーム力もアップさせる。さすがだな、と思ってきました」
勝った瞬間に優勝が決まるマリノスとの最終節では、トップ下で荒木遼太郎(23)、右サイドハーフでは松村優太(24)が先発で今シーズン2度目の共演を果たした。指揮官が「彼らが実力で勝ち取ったもの」と迷わずに高卒6年目コンビを抜擢し、レオ・セアラの1点目を荒木が、2点目を松村がアシストしている。
特に2点目は鬼木体制で求められてきたプレーから生まれた。左サイドから鈴木が送ったサイドチェンジのパスが相手に渡った直後。ボールホルダーとの間合いを一気に詰めた松村のプレスが相手のミスパスを誘発。それを素早く右サイドへ展開し、ポケットを突いた松村の完璧なクロスをレオ・セアラが頭で叩き込んだ。
自らのパスミスを「酷かった」と苦笑した鈴木は、今シーズンにセレッソ大阪から加入し、21ゴールで得点王を獲得したレオ・セアラを称賛しながらこう続けた。
「チャレンジした選手のプレーをリスペクトしよう、とみんなで話している。味方のミスに『ふざけるな』と思うのではなく、ミスをしたら『すぐに切り替えよう』と。今シーズンは切り替えの速さから取っている点もすごく多いし、オニさんもチームの強みのひとつだと言っている。何よりも僕たち自身が、取られた次の瞬間にボールを奪い返せば、今の前線の選手の力なら点を取れると思っているので」

