堤聖也とノニト・ドネアが公式会見後に握手を交わす(写真・山口裕朗)
堤聖也とノニト・ドネアが公式会見後に握手を交わす(写真・山口裕朗)

堤聖也が井上尚弥とのドネア情報を巡ってのSNS騒動“真意”明かす

 プロボクシングのトリプル世界戦(17日・両国)の公式会見が15日、都内ホテルで行われ、WBA世界バンタム級正規王者の堤聖也(29、角海老宝石)と、5階級制覇王者で同暫定王者のノニト・ドネア(43、フィリピン)がそれぞれ意気込みを語った。堤はドネアに2度勝利しているスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)に助言を求めた一件を巡ってSNSで“プチ騒動”となったが「あれは違うんです」と釈明。改めてモンスターからヒントを得たことを明かし「倒されても倒し返せばいい」との悲壮な決意を口にした。なお試合の模様はU―NEXTで独占ライブ配信される。

 

 「ドネアの拳がでかい。特にナックルが」

 隣に座ったドネアを注意深く観察していた。
 食い入るように見ていたのはその拳だ。
「どこで打っているかが気になった。拳がでかい。特にナックルがね」
 ボクシング界で拳の大きさはパンチ力に比例するとされる。
これがドネアが「フィリピンの閃光」と呼ばれる左フックでバッタバッタとダウンを奪い続けていた理由なのか。
「フィリピン人みんなパンチ強いからそうだろうな。左だけでなく右もしかり。誰でもタイミングよくもらうと倒れちゃう」
 警戒心を強めた。
 ツーショットの写真撮影では背格好を確認した。
「ヒールが厚かったのかもしれないが、こんなもんかと」
 勝つために最大のレーダーを張り、やるべきことをすべてやる。これが堤の強さ、向上心の秘密だろう。
 5階級制覇王者のドネアと2度戦い、2度勝ったのが井上尚弥だ。2019年11月のWBSS決勝では、井上は、その左フックを浴びて眼窩底骨折を負いながらもボディショットでダウンを奪っての判定勝利。2022年6月の再戦でも、1ラウンドに電光石火の奇襲を受けるも、2ラウンドにTKO勝利している。
 堤は、アンダーカードでWBO世界フライ級王者のアンソニー・オラスクアガ(米国)に挑む桑原拓とのスパーリングで大橋ジムを訪れた際に、たまたま居合わせた井上に助言を求める機会に恵まれた。
「パンチの質だけでも聞ければ」と、戦ったものにしかわからないドネアの情報を求めると、井上は「フックは痛いよ。まともにもらったら危ないよ」とのアンサー。堤は、自身の公開練習で、そのやりとりを明かした上で「知ってたあ、と思い、何の成果も得られなかった」とジョークを交えて感想を漏らし、そのコメントが動画や記事で広く報じられると、モンスターからSNSでリアクションがあった。
「おいおい!つつみん! 知ってるなら聞くんじゃないよ!笑」
 その軽妙なやりとりがSNSでプチ騒動となった。
 堤はモンスターの反応に「ビックリしました」という。
「陰口じゃないけど、陰口が先輩にばれた1年生、やばいやばい、みたいな(笑)。(でも)あれは、違うんです、としか、言いようがない。“フックをもらうと危ないよ”…それはわかっているんですよね(笑)。でも他の部分で“なるほど”があった」
 井上の分析力には定評がある。自らが対戦したWBO世界バンタム級王者、ジェイソン・モロニー(豪州)に武居由樹が挑む際にはその特徴を真似たマススパーでアドバイスを送り、武居のベルト奪取をサポートしたし、弟の拓真が那須川天心(帝拳)に判定勝利したWBC世界バンタム級王座決定戦の試合前も、真似をして特徴を伝えた。今回は桑原にも仮想オラスクアガを演じたマススパーで助言を与えた。
 もちろん堤は井上から他にも情報を聞くことができた。
「クセなどの具体的なことではなく、感覚的な“なるほど”で、イメージを入れることはできた。フックが危ない…をより感じた」
 モンスターのヒントがドネア対策の大きなプラスになったことを明かした。

 

関連記事一覧