• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「フェアな採点ができていない」ドネア夫人が不服も「鼻が折れた」堤聖也が「左拳4本の血豆が全部破けた」ほど殴られたレジェンドとの死闘を2-1判定で制した理由とは?
堤がドネアに傷だらけの逆転勝利(写真・山口裕朗)
堤がドネアに傷だらけの逆転勝利(写真・山口裕朗)

「フェアな採点ができていない」ドネア夫人が不服も「鼻が折れた」堤聖也が「左拳4本の血豆が全部破けた」ほど殴られたレジェンドとの死闘を2-1判定で制した理由とは?

 しかし本番になるとまるで別人なのだ。ほとんどのボクサーが、その逆で、“スパー王者”と揶揄されるボクサーも少なくない。超実戦型のボクサーとしては、あの辰吉丈一郎がいるが彼は天才型。堤のような努力型で、そのタイプは珍しい。
 堤にそのワケを聞く、
「日々の積み重ね、日々の準備です。もうそれだけ。だからこういうきつい時でも頑張って戦える」
 これ以上ないアンサーだった。
 リング入場時に羽織ったオリジナルのスタジアムジャンパーの右袖には、同じ熊本出身の元世界王者、重岡優大、重岡銀次朗の兄弟の名前を縫い込んだ。5月の世界戦で、意識を失い、開頭手術を受けた銀次朗は、今なお懸命のリハビリを続け、弟を支えるために兄の重大は現役を引退してカフェの開業準備を進めている。
「優大と銀。こいつらを近くに感じてたかったんで勝手に入れさせてもらった」
 泣ける思いがそこにあった。自らの生き様をリングで見せることで2人への応援エールに変えたかった。そして堤も彼らに支えられた。
 次戦は母親の死去で練習に打ち込めず休養王者となったアントニオ・バルガス(米国)との団体内統一戦を120日以内に行うことをWBAから指令されている。
 堤は「今日の内容で大きなことは言えない。統一戦はやらなければならない試合だが、決まらなければ是非そっちの挑戦を受けたい」として「スーパーフライからバンタム級にあげてくるレジェンド」との対戦を熱望した。
 大晦日にWBA世界同級挑戦者決定戦に挑む井岡だ。
「一番ワクワクする対戦相手。僕が学生の時から見てたチャンピオン。人としての憧れを持ってる選手と、僕がチャンピオンとして戦える機会は他にないじゃないですか」
 井岡にはこの日のリングサイドにいたWBC世界同級王者の井上拓真(大橋)も狙いを定めている。堤はバルガス戦が最優先となるため、タイミング的に現時点での井岡戦の可能性は薄い。だが、勝ち進めばその先にどんな未来が待っているかわからない。
「どっちと戦ってもいいようにイメージして試合を見た」という前WBO世界同級王者の武居もリングサイドから目を凝らしていた。
 この試合を「準決勝」と称した堤は、この先の「決勝」へ向かうために、まだまだ足りないものがあると感じている。
「苦手なタイプのボクサーになんとか競り勝てたのは今後の自信にはなる。だが、ボクシングを知らない人は圧勝しないといけない試合とか思ってるとも思うし、僕の世界チャンピオンとしての価値がこの試合で上がったかというとわからない。“相変わらず面白い試合をするよな”となると思うが、“やっぱ堤は凄げえ、強えーよ”となる試合だったかというと疑問符がつく。もっと色々と修正するところ、強くなれる部分はたくさんある」
 この堤の志こそ“ゾンビ”と評される「絶対にあきらめない戦い」の源泉なのだろう。
 なおドネアは、試合後、関係者に「引退はしない。もう一度戦いたい。最後は日本のリングで」と現役続行の意思を伝えている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

関連記事一覧