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逆転TKOでライト級の新人王となった出畑力太郎がMVP(写真・山口裕朗)
逆転TKOでライト級の新人王となった出畑力太郎がMVP(写真・山口裕朗)

「またとんでもない怪物が出てきた!」全日本新人王MVPは逆転TKO勝利の高校3年生の出畑力太郎…父は正道会館の師範でK-1出場もした全日本優勝経験者

 リング上のインタビューでは家族へ感謝の意を伝えた。
「ほっとしています。一番の応援団長の姉ちゃん、一番近くで支えてくれた父ちゃん、本当にありがとうございました。産んでくれた天国の母ちゃんにも感謝したい」
 出畑が4歳の時、母のひろみさんは交通事故で、42歳の若さでこの世を去った。
「薄っすらと記憶があるんです。そこから、ずっとお父さんが1人で育ててくれ、ここまでサポートしてくれたんです」
 父の力也さんは、「やはり家事、炊事が大変だった。やってことがないからね。でも、力太郎はキャラ弁が欲しいなんでわがままも言わなかった」と笑って振り返った。
 6歳から正道会館で空手を始めたが、小学生の頃は「絵を描くのが好きで漫画家になりたいと言っていた」(父の力也さん)という。
 漫画家志望の子供父が持っていた「あしたのジョー」のDVDを見てボクシングに目覚めた。
「ジョーが違うスポーツをやっていたらボクシングじゃなかったかも」
 全シリーズを新たに集めてむさぼるようにして読んだ。
 正道会館では、ボクシングやキックの技術も学んでいた父親は、息子のミット打ちやマスボクシングの相手も務めていた。
「こっちがパンチを出しても目をそむめて逃げない。それと当て勘があった。僕がコツンとパンチをもらうんです。なかなかいいんじゃないかなと」
 父は素質を感じ取っていた。
「ボクシングに集中したいから」と、高校は授業などの負担が少ない一橋高校の通信制を選び、進学と同時に自宅近くのマナベジムへ入門した。だが、父は「プロになりたい」と告げられた時は戸惑った。
「本当にプロでやるの?ボクサーの選手生命は短いし怪我でダメになることもあるんだぞ」
 そう考え直すように諭すと「やる以上、そんなこと考えてやらないよ。父ちゃんだって、現役時代に引退後なんて考えてないでしょう?」と逆に説得された。
「意思が固かった。何も言えなくなったんです」
 これで6戦6勝(5KO)。
 やはり倒す力のあるハードパンチは魅力だ。しかも、出畑の場合、荒っぽい倒し屋ではなく、クレバーさがある。
 角海老宝石の日本王座挑戦経験のあるアオキ・クリスチャーノ、日本ランカーの齊藤陽二、2023年のスーパーライト級の新人王、川村英吉、2024年のスーパーフェザー級の新人王の梶野翔太らとスパーを重ねた。「ムキにならないことを学んだ」という。
 幼い頃から、父が自宅で行う腹筋ローラーを使う自重トレを真似してやってきた。空手の「拳立て」も日課にしていた。その基礎体力がパンチ力の源流だろうが、本人は「倒すのはパンチ力ではなくタイミング。振り抜くことをテーマにしている」と素晴らしい理想論を明かす。理想のボクサー像はひとつの時代を作った“カリスマ”辰吉丈一郎。
 今どきの高校生にしては珍しいが、これも昭和の時代を生きた父の影響。そして「無駄なダウンなどせず圧倒的に勝つボクサー」を目指したいという。
 来年3月に卒業するが「プロ1本」の決意にぶれはない。
 マナベジムでは、新人王はフライ級の長嶺克則以来、13年ぶり2人目。真部豊会長は、来年は23歳以下が条件のユースタイトルの挑戦プランを温めていることは明かした。
 もちろん目標は世界王者だが、出畑は大きいことは言わない。
「いつまでに?そんなことは考えたことはないですよ。1戦1戦、戦うだけ。結果は後からついてきます」と、どこかのプロ野球チームの監督みたいなことを言った。これも今どきの高校生らしくなくていい。
 世界王者“不毛”の階級であるライト級で戦うという。

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