「唯一の誤算は…」なぜ日本団体は米国を1点差まで追い詰めることができたのか…無良崇人氏は「限りなく金に近い銀」と評価
無良氏は坂本の演技をこう絶賛した。
「精神力の強さが垣間見えました。落ち着いていい表情でした。引退の覚悟をもって演技しているからこそ選曲も含めて見ている側の胸に刺さるいい演技となっています。スケーティングのスピード感、ジャンプの完成度、持っているものすべてをショート、フリーで出し切りましたね。演技の密度の濃さが際立っています。そこが点数に反映されています。着氷で少しバランスが崩れて3回転がダブルになりましたが、無理やり3回転を試みて、大きなミスにつなげ、他の加点への影響が出るよりも、しっかりと点数を得る形にしました。咄嗟の判断。経験からくる対応力の高さです」
そして勝負は男子シングルフリーで決着をつけられることになった。
米国は当初中1日ですぐに個人戦が始まることから“4回転の神”マリニンには、SPだけを任す予定だった。しかし、日本とのポイント差と、最終日の展開を想定して、急きょ、2シーズン負け無しのマリニンのフリー起用を決断していた。米国からすれば、その戦略変更がズバリ的中したことになる。
だが、そのマリニンに“まさか”が起きる。
冒頭の4回転フリップこそ綺麗に決めたが、次に予定していた4回転アクセルを回避してトリプルアクセルに変えると、続く4回転ループが3回転ループとなるミスを犯した。さらに後半最初のジャンプは4回転ルッツ+1回転オイラー+3回転フリップの3連続ジャンプが予定されていたが、ルッツの着氷でバランスを崩して単発に終わってしまったのだ。
その後、4回転を2種類飛び、最後にSPで五輪では長野五輪以来28年ぶりに解禁していたバックフリップ(バク宙)をまた試みて会場をドッと沸かせたが、不完全燃焼。演技後に笑顔はなかった。
それでも4種類5本の4回転基礎点の高さから200.03点の大台に乗せた。
無良氏は、マリニンの異変をこう分析した。
「滑り出しの段階から緊張しているなと感じました。あれだけの記録を叩き出している彼でさえ五輪は緊張する舞台なのでしょう。4回転アクセルを封印したのは、女子が終わった段階での順位を踏まえて、ミスはできない、確実に点数を取りにいかねばならないという判断だと考えられます。最善の選択だったと思います。あくまでも推測ですが、中1日で個人戦がありますので肉体的負担への配慮もあったのかもしれません。4回転ループが3回転ループになってしまったのは飛び急ぎです。普段のリズムではありませんでした。気持ち的な部分が大きかったと思います。踏み切りや空中での軸が崩れたわけではありませんでしたが、4回転ルッツの着氷が乱れてトリプルコンビネーションにつなげることができませんでした。崩れても修正できる“ストライクゾーン”の広さが特徴でもある彼が、あそこまで失敗を引きずるのは珍しい。緊張がすべてのミスを誘発しました」

