「年内タイトル戦も視野に入った」なぜ秋元強真はRIZINで元ベラトール王者に衝撃TKO勝利の金星を挙げることができたのか?
2015年のRIZIN設立から10年を経て、榊原CEOは2026年の初戦で次の10年をにらんだマッチメイクに注力した。全カード終了後にはこう語っている。
「これまでの10年を引っ張ってきた選手ではなく、次の10年を一緒に輝いて欲しい、走って欲しい選手ですね。プロモーター的にはかなりの賭けに出ました」
案の定と言うべきか。チケットは前売りでは完売しなかった。
メインイベンダーを務めた秋元自身もこう振り返っている。
「例えば(朝倉)未来さんが出るだけで会場が埋まるけど、今回は正直、埋まっていないのが自分でもわかっていたし、その意味でもすごく悔しかった」
だからこそ、一部では無謀とも揶揄されたミックス戦を圧勝で終えた衝撃は、榊原CEOを「良い意味で何倍も裏切ってくれた」とこう喜ばせた。
「ミックスの体調が悪かったのか、あるいはバンタムからフェザーへ思うようにアジャストができなかったのか。いろいろな憶測はありますけど、それでも秋元が最初に向き合った距離がむちゃくちゃ近かった。あれだけの歴戦の強者にまったく臆さずに挑んだ秋元の姿に未来を感じました。日本の若者も捨てたものじゃない、と」
そして、秋元が師匠と慕う同門の朝倉未来(JAPAN TOP TEAM)が、自身のX(旧ツイッター)で「天才!」と称賛した秋元の勝利はSNS上で大きな反響を呼んだ。昨年の大晦日のRIZINのメインイベント、フェザー級タイトルマッチで挑戦者の朝倉に圧倒的な力の差を見せつけた末に、1回わずか2分54秒でTKO勝ちした絶対王者シェイドゥラエフに挑戦して欲しいとする投稿が殺到したのだ。
秋元は「さすがにちょっと休みます」と苦笑したが、榊原CEOは「この階級には絶対王者がいるので」とシェイドゥラエフとのタイトルマッチを否定しなかった。
「本当に年内にも完全に背中が見えたというか、視界に入ったんじゃないですか。このまま一気に行くのか、別の選手とのマッチアップがあっても良いと思うし、あまりスピードを上げてページをめくらずに、しっかりと戦いのドラマを紡いでいきたい」
秋元本人は今後のキャリアをどのように思い描いているのか。当面は誕生日モードに浸りたいと笑いながら、リング上で宣言した通りに、日本国内に軸足を置いて戦っていく青写真を、挑発を込めた言葉を介してあらためて明かしている。
「俺はUFCに行こうとか、そういう考えはまったくないので。大きい言い方をすれば、俺と戦いたいのなら日本に来い、という感じですね」
秋元が格闘技に関心を持ったのは、RIZINで活躍する朝倉兄弟をたまたまテレビで観た中学時代だった。それまでサッカーに夢中だった少年は、親の反対を押し切って合格していた高校へ進学を自らの意思で辞めてプロ総合格闘家を志した。一大決心から5年。ミックスへの恐怖心を勇気と努力で乗り越えた新星が、最高の輝きを放ち始めた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

