
阪神がCS先勝で横浜DeNAに示した13ゲーム差の“違い”とは?…「わからなかった」味方さえ欺いた近本の三盗と藤川監督が繰り出した回跨ぎ連発のCSスペシャル継投
セパのクライマックスシリーズのファイナルステージが15日に開幕。リーグ優勝した阪神が甲子園で2位の横浜DeNAに2-0で勝利し、アドバンテージの1勝をプラスして2勝0敗とした。近本光司(30)が6回に相手バッテリーの無警戒のスキをついて先制点につながる三盗を決め、藤川球児監督(45)は、及川雅貴(24)と石井大智(28)の防御率0台コンビを回跨ぎでつなぐCSスペシャル継投を繰り出して、横浜DeNA打線を完封リレーで封じた。
先発の村上は5安打3四死球で毎回走者を背負いながらも無失点の抑える
味方のベンチさえ欺いた。
「よくわかりませんでした。驚いた?そうですね」
試合後に藤川監督が苦笑いでそう明かした。
0-0で迎えた6回。執念の内野安打で出塁した近本がバントで二塁に進むと、打者森下の初球に三盗を決めたのだ。
東はセットに入ると、一度、近本の方に顔を向けて動きを見た。さらに短く、もう一度見たが、次の瞬間、近本は東が足を上げる前に三塁へスタートを切っていた。
直後に最悪のリスクを考えてワンクッションだけ置いたが、近本はバッテリーの無警戒を察知。おそらくランナーセカンドの場合の東のなんらかのクセを盗んでいたのだろう。2度見た場合に牽制がないというデータがあったのかもしれない。しかも投球は変化球だった。
クリーンナップを迎えてのこの場面での三盗は「100%の確信のあるときだけ」がセオリー。今季32盗塁で、4年連続6度目の盗塁王を獲得した近本の勇気と自負がもたらしたまさかの三盗が、ここまで東から突破口を開くことができなかった試合の流れを変えることになる。
内野が前進守備を敷き、ヒットゾーンが広がり、外野フライで1点が取れる。森下は気持ちが楽になったという。
「まず近本さんが三盗を決めてくれたんで、すごく気持ちとしても1つ重心がおりました(楽になったの意味?)。自分の中でも絶対に打ったろうという気持ちがあったので、その気持ちを強く出しながら打席に立つことができました」
144キロのシュートを叩きつけた打球がセンターへ抜けていった。森下は雄叫びをあげながら、一塁へ走り出した。
さらに森下は、もうひとつの隠れたファインプレーをしている。
続く佐藤が、センタ―前へポトリと落とすテキサスヒットで一、三塁にチャンスを広げると、大山の三塁ゴロで、ホームへ突入した森下が、三本間に挟まれて時間を稼ぎ、その間に佐藤が三塁まで進塁したのだ。
再び二死一、三塁として、代走から途中出場の小野寺がライト前へタイムリー。「僕らしい汚い間に落ちるヒット」という小野寺の一打が貴重な2点目となった。
スポ―ツ各紙の報道によると、三浦監督は「(盗塁ケアの)指示を徹底できなかったこちらのミス」と、近本の三盗場面を振り返ったそうだが、スキを見せた横浜DeNAと、ソツのない阪神の野球観の違いが際立ったシーンだった。これがレギュラーシーズンで最終的に13ゲームが開いた優勝チームと2位チームの違いの一つなのかもしれない。
先発の村上は、テンポも悪く、ベース上で回転が落ちないはずのストレートにキレもなく、コントロールも悪かった。特にチェンジアップが制御できていなかった。1回から5回まで、毎回、走者を背負う苦しい展開だったが、あと1本を許さなかった。
現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人は、その理由を「坂本のリードにある」と指摘した。