世界初挑戦の那須川天心は元WBA王者の井上拓真に勝てるのか…公開スパーから判明した天心の「狙い」と「戦略」を読み解く
プロボクシングのWBC世界バンタム級1位の那須川天心(27、帝拳)と同級2位で元WBA世界同級王者の井上拓真(29、大橋)が対決する“ビッグマッチ”WBC世界バンタム級王座決定戦(24日、トヨタアリーナ東京)が近づいている。ボクシング転向8戦目でビッグマッチに挑む天心は元世界王者の拓真に勝てるのか。12日に行われた公開スパーを検証した。なお試合の模様はAmazonプライムビデオで独占ライブ配信される。

敵情視察の中でのスパーリングはキック時代にもそしてボクシングに転向してからも一度もなかった。
「なんか新鮮。(井上陣営が)赤いジャージで“やったるでえ”のスタイルできた。どこまでやっていいんだろうと考えてもしたが隠すこともない。普通にやりました。ちょっと(見てどう思ったか)話を聞きたいなと思った」
井上陣営からは、北野良、鈴木康弘・両トレーナーに、井上兄弟のいとこで元日本&WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者の井上浩樹の3人が、揃いの赤いジャージで視察に訪れていた。
天心は、20戦無敗のWBO世界スーパーバンタム級14位で1m73の長身セレックス・カストロ(メキシコ)と2ラウンドのガチスパー。ジャブと独特のステップやトリッキーな動きを見せながらプレスをかけて間合いをつめ、ワンツー、さらに2ラウンドにはフェイントを入れてからの強烈な左のボディカウンターを御見舞いした。カストロがプレスに負けて下がり、手数が少なかったことで激しい打ち合いやラッシュをするシーンはなし。だが、これは手の内を隠したわけではなく、天心曰く、スパーを重ねる中で起きた現象だという。
「最初は下がる選手じゃなかった。ボクシングをやって出入りや前へ来たりはしていたが、やる度に変わってきた。見合う展開。何を出せばいいかわからない状況にさせている。あえて隙を作れる。隙があるのと作るのでは違う。誘える展開が増えた」
本田明彦会長は、天心の大一番に向けて5人のパートナーを用意した。総合型のアルツロ・ポポカ・カルデナスは、WBC北米スーパーバンタム級王者でWBC世界同級20位。セサール・バカは67キロあって使えなかったが、18勝(13KO)無敗のアンヘル・パトロン(以上3人がメキシコ)はゴリゴリのファイタータイプ。そしてオラユウオン・アコスタ(プエルトリコ)はWBA世界スーパーフライ級8位のスピードタイプ。「井上拓真選手がどんなボクシングをしてきても対応できるようにした。長身のカストロのパンチが当たらなければ、井上拓真選手のパンチも当たらない」と本田会長が狙いを明かす。
天心のスピード&センスvs拓真の経験&総合力の対決構図が予想される。天心の方が距離は遠く、しかもサウスポー。スピードを生かしてポイントアウトしていく戦略が目に浮かぶが「どうさばくか?」の質問に天心は、こう反発した。
「さばく意識はしていない。スピードで戦う概念でやっていない。そこをポイントと見る人が多いがそこじゃない面白いものが見える。出たとこ勝負。どんなスタイルできても大丈夫な用意はしてきた」
そして「向こうもたくさん手札を持っている。それを逆手にとれる」とも付け加えた。
「色んなスタイルに挑戦してきた。前回はを足を止めて自分で前へいったし、モロニー戦もそう。それを全部集約したスタイルの“シン・ボクシング”を今回出せる」
天心は、ボクシング転向後の7戦で質より量を追求し基本のハウツーを学んできた。そしてチャンピオンメーカーの本田会長が驚くほどの脅威的な成長力で、世界レベルの駆け引きができる域にまで到達した。

