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JBC実行委員会の後に会見を開くJBCの萩原理事長(左)と日本プロボクシング協会のセレス小林会長(右)
JBC実行委員会の後に会見を開くJBCの萩原理事長(左)と日本プロボクシング協会のセレス小林会長(右)

8.11世界戦までに“ノーモア井岡問題“の日本独自の厳格ドーピングルール制定へ

 

日本ボクシングコミッション(JBC)の実行委員会が7日、都内で行われ、8月11日までに未整備だった独自のドーピングルールを定めることを決定した。昨年大晦日の世界戦のドーピング検査でWBA世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(34、志成)の尿検体から大麻成分が検出されたが、世界アンチドーピング機構(WADA)が定める基準値に達しない微量だったため、JBCルールに違反していないと判断された。だが、新たなルールでは日本独自の厳格な閾値を定めて微量であっても違反とする方向だ。
 また“替え玉ボクサー事件”などの不手際が続くJBC組織の抜本改革が行われることも協議の中で明らかにされた。問題を起こした東西の試合管理部長が解職され、新たに管理体制を強化するための主任職を置き、廃止されていた西部の担当職員を復活させる。前職2人、新任1人の計3人の増員になるという。新体制は今月末までに発足する。

 「これまでは規定が明確ではなかった」

 

 “ノーモア井岡問題”に舵を切る。
 日本プロボクシング協会会長で元WBA世界スーパーフライ級王者のセレス小林氏の訴えが聞き入れられ、日本独自の厳格なドーピングルールが定められることになった。
「ボクシングはクリーンでなければならない。そうでなければ競技人口も増えない。ダメなものはダメ。大麻は日本では認められていないのだから微量でもダメ。ボクシングは、薬をやってもいいスポーツなの?と思われるのが嫌だし厳しいルールが必要ではないか」
 小林会長は、2度にわたる実行委員会で協会サイドの総意として、そう訴えてきた。
 昨年大晦日の井岡―フランコ戦のドーピング検査で井岡の尿検体から大麻成分のTHCが検出された問題では、WADAの基準値である150ng/mL以下の微量だったため、ドーピング違反とはならず6月24日の世界戦も認められた。
 しかし、新しく制定されるドーピングルールでは大麻成分に関しては150ng/mL以下であっても15ng/mL以上が検出された時点で一発アウトの厳格なものとなる。
 JBCの安河内剛本部事務局長は、「大麻の問題については、協会からのアゲインストもある。150という閾値を考えず、15以上をカットオフ値として一発アウトとかの規定を作れば問題はない。これまでは規定が明確じゃなかった。すでに作業に入っている」と明言した。
 15ng/mL以上とする理由は、副流煙や大麻成分の含まれた食品やリラックスオイルの使用の影響などで15ng/mLまでは検出される可能性があるからだという。ちなみに今回の検査で井岡の検体からは50ng/mL前後の量が検出されていた。
 今回は、井岡陣営の立ち合いのもと和歌山で行われたB検体の検査でも、再び大麻成分が検出されたため、ライセンス停止、6月24日の試合中止も議論された。だが、JBCにドーピングに関する明確な規定がなかったため、もし厳罰を下した際の訴訟リスクが問題となり、理事でもある弁護士の提案でJBCが加盟していないWADAの基準値に準拠する方針が固まった。
 井岡の検体から検出された大麻成分が150ng/mL以下だったためドーピング違反には問えないとの判断が下された。
 2020年大晦日の井岡―田中恒成(畑中)の世界戦のドーピング検査でも大麻成分が検出されたが、JBCの杜撰な検体の管理が明らかになり、井岡の潔白を証明するためのB検体も、警察に相談したために没収されるなどの不手際が相次ぎ、結局、井岡側が主張した「尿が腐敗して大麻成分が生成された可能性がある」との答申が受け入れられ、当時のJBCの理事長が謝罪した。その際、新たなドーピングルールを定めることが決まっていたが、実際は、何ひとつ手がつけられておらず、今回の大麻成分検出の際にも、あてはめるルールがなかった。またすでに当時の理事長、事務局長は退任したが、彼らの体制下では大麻がドーピング検査の対象項目から外されていたという。

 

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