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年末の日本タイトル戦で4度のダウンを喫して開頭手術を受け意識不明となっていた穴口一輝が帰らぬ人になった(写真・山口裕朗)
年末の日本タイトル戦で4度のダウンを喫して開頭手術を受け意識不明となっていた穴口一輝が帰らぬ人になった(写真・山口裕朗)

励ましの音声テープを耳元で流し続けるも…4度ダウンの穴口一輝が開頭手術後も意識戻らず死去…井上尚弥セミの日本王座戦

 JBC(日本ボクシングコミッション)は2日、昨年12月26日に有明アリーナで行われた日本バンタム級タイトルマッチで4度のダウンを奪われ判定負けした穴口一輝(真正)が亡くなったことを発表した。穴口は、試合後に意識を失い、救急車で搬送され右硬膜下血腫の緊急開頭手術を受けた。その後も意識が戻らず、経過観察中だったが、この日の午後5時38分に永眠した。23歳だった。

 2023年度の「年間最高試合」

 祈りは通じなかった。
 2日に発表された2023年度の「年間最高試合(世界戦以外)」に選ばれたが…その栄誉が穴口の人生の10カウントに重なってしまった。
 穴口は、井上尚弥(大橋)の2階級4団体制覇がかかるビッグマッチのセミファイナルで優勝賞金1000万円の「井上尚弥4団体統一記念・バンタム級モンスタートーナメント」決勝として、日本同級王者、堤聖也(28、角海老宝石)のベルトに挑戦した。
 無敗のサウスポー同士の対戦となったが、穴口は、序盤からステップを駆使したスピードのあるボクシングでポイントを重ね、3ラウンドには、パンチで堤の左目上をカットさせた。4ラウンドに左のロングフックからの追い打ちを受けてダウンを奪われたが、ダメージのあるダウンではなく、5ラウンド終了時点の公開採点では3者が共に穴口を支持していた。
 その後は、激しい打撃戦となり、穴口は、7、9ラウンドとダウンを喫したが、その度に立ち上がり反撃に転じていた。 最終ラウンドも、ポイントをとれば穴口の勝利だった。
「絶対に勝つ。倒しにいく」
 セコンドに穴口は、そう力強く宣言してコーナーから出ていったという。JBCのインスペクターが、毎回、インターバル間に穴口の様子を確認していたが、試合を止めるほどの異常は見られなかった。
 だが、残り10秒の拍子が鳴ったところで、右ストレートからの連打を浴び、それはクリーンヒットではなかったが、穴口は前のめりに倒れた。すぐに立ち上がって、しっかりとファイティングポーズを取ったが、ここでゴング。判定は、94―92が2者、95-91が1者の3-0判定で、堤が4度目の防衛に成功した。
 穴口は、試合直後に足がよろけた。リング中央で堤と健闘を称え合ったが、足が小刻みに痙攣する異常が発生していた。コーナーに戻った穴口は、そこに膝まづき椅子に座ることもできなかった。ただ、この時点ではまだ意識がハッキリしており、トレーナーの補助を受けながら自分で歩いて控室に帰ったが、そこで体に力が入らなくなり医務室へ運ばれて意識を失い、イビキをかき始める危険な状況になった。
 すぐに救急車で都内の病院に搬送。JBCの手配で脳外科医が2人待機していたこともあり、時間のロスもなく、脳圧を下げるため、ただちに開頭手術が行われ最善の措置が施された。しかし、意識が戻らず予断を許さない状況が続いた。年末には呼吸器系統の機能を活発化させる措置が施され、低下していた血圧が元に戻り、最悪の状態からは持ち直したものの、意識は戻らずに、内臓の機能にも影響が出始めていた。

 

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