
井上尚弥に挑むカルデナスが司会者に「噛ませ犬」と表現されるも「失うものは何もない。ただ完璧な36分間を戦う必要が」と悲壮決意…モンスターは堂々「求められているものは承知」と宣言
また井上が考える過去のベストバウトも明らかになった。
「スーパーバンタム級に上げたフルトン戦は、自分の中でひとつ気に入った試合」
井上は、バンタム級の4つのベルトを統一すると、2023年7月にテストマッチも挟まず、いきなり1階級上のWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米国)に挑戦し、8回にTKOでキャンバスに沈めた。その試合がベストバウトのひとつだという。
そしてここで面白い質問が飛んだ。
そのフルトンとカルデナスの髪型が似ているというのだ。両者とも司会者が「ネズミのしっぽ」と評した細い後ろ髪を数本長く残した髪型をしている。すると井上は「なんとなく気づいていました」と笑って答えた。
そのカルデナスは井上の前にリングに登場して悲壮な決意を明かした。
ミット打ち、シャドーボクシングを披露した後に、井上に勝つための方策を聞かれ、「ずっと言ってきたが(勝つためには)パーフェクトな36分間を戦う必要がある。パーフェクトな36分間を戦ったとき、私が誰もが認めるチャンプになるだろう」と口にしたのだ。
司会者に「間違いは許されない」と質問されると「そうだ」とうなずいた。
カルデナスは、好戦的ではあるがパンチを打つ際にガードが甘くなる。その小さなディフェンスのミスを井上は見逃してくれない。おそらくカルデナスもそれを理解しているのだろう。
そして彼も司会者に「あなたは今回“アンダードッグ(噛ませ犬)”の立場だが」と厳しい表現を投げかけられた。
「(井上と戦うという)夢が実現した。でも、この夢を完成させなければならない。失うものは何もない。得るものだけだ。自分がやりたいことをやってやる。ファンにショーを見せるだけだ」
そう言い次の質問に対してこう続けた。
「金のためにここにいるわけじゃない。オレは、レガシーを作るためにここにいるんだ。お金は出ていくが、世界王者になれば、その事実は誰も奪うことができない。この世を去ったあとでも永遠に残るじゃないか」
メキシコ系米国人のカルデナスにとってみれば「シンゴ・デ・マヨ」ウィークのリングに立つこともこれ以上ない名誉。T-モバイルアリーナの観客の応援を味方につける可能性もある。その悲壮な覚悟がモンスターにどこまで通用するのか。
最後に。
井上が、司会者とのやりとりで返答に困ったシーンが一度だけあった。
「米国の格闘技ファンが知らない話を何かひとつ教えて下さい」と聞かれ「知らないこと?難しいなあ。アハハ」と答えなかった。
司会者が「じゃあ、好きな食べ物は?」と問うと「唐揚げ」と返した。
それが「フライドチキン」と、米訳されると、「私も大好きです」と司会者を喜ばせ、会場からは笑いが起きた。モンスターが見せたチャーミングな一面もまた米国のファンの心をつかんだのかもしれない。