
「心臓に悪い走りで申し訳ない」レッドブル角田裕毅が10位入賞を果たしたマイアミGPの舞台裏…いかにしてピットレーン速度違反の5秒ペナルティを克服したか
F1の今季第6戦、マイアミGP決勝で5秒ペナルティーを科されながら、10位に入賞したレッドブルの角田裕毅(24)が、レース終盤にチーム側とかわし続けた生々しい無線の内容が明らかになった。F1公式サイドなどが5日に報じた。姉妹チームのレーシングブルズのアイザック・ハジャー(20、フランス)に猛追された残り2周で、エンジンの出力を「3」から「4」へ切り替えた判断が、0秒168差での逃げ切りを生んだ。角田はレース後に「心臓に悪い走りで申し訳ない。次はもっとやるよ」とチームへ謝罪している。
明らかになった緊迫の無線の内容
残り2周での判断が、角田の10位入賞を導いていた。
逃げ切りを図る角田と、レッドブルのエンジニア、リチャード・ウッド氏が無線で交わした言葉の数々が、緊迫した状況を伝えている。まずはハジャーの猛追を受けていた角田が、ウッド氏へエンジンモードを確認した。
「残りの周回はモード3でいいの?」
土壇場での提案に、ウッド氏らは答えに窮した。
「すまない、もう一度頼む」
再び「残りはモード3でいいの?」と聞いてきた角田に対して、今度は数秒の沈黙が訪れる。おそらくは角田のマシン、RB21のエネルギー残量をさまざまな角度から確認していたのだろう。ウッド氏は語気をやや強めて言葉を返した。
「モード4、モード4だ」
エンジンの出力を上昇させる指示が、最終57周目において、角田のラップタイムをわずかに速めた。5秒のタイムペナルティーを差し引いたタイムで、ハジャーをわずか0秒168差上回った。無我夢中だったからか。角田はチェッカーを受けた状況に気がつかず、ペースを緩めていなかった。
前方を走っていたウィリアムズのカルロス・サインツ(30、スペイン)らのマシンがスロー走行になった光景を見て、角田は再び無線で確認した。
「これでフィニッシュだよね」
角田をねぎらうように、ウッド氏が言葉を返した。
「フィニッシュ、10位だ。ラスト数周、よくやったぞ」
ようやくアクセルを緩めた角田が、安堵したように言葉を紡いだ。
「全力を尽くしたけど、(レース全体の)ペースは本当に悪かった。また話し合おう。ピットレーンの件は申し訳ない。厳しかった」
ピットレーンの件とは、角田が科された5秒のタイムペナルティーを指す。
決勝は途中で雷雨になる予報が出ていたなかでスタート。10番グリッドの角田は1周目でハースのエステバン・オコン(28、フランス)を抜いて9位に浮上した。しかし、雨を見越したセッテイングが影響していたからか。前方を走るフェラーリのシャルル・ルクレール(27、モナコ)との差をなかなか詰められない状況が続いた。
「10分後に雨が降り始めて、5分は降り続きそうだ」
天候の急変に関してこう指示していたウッド氏は、雷雨にはならない、と一変した予報を受けて方針を転換。角田へ緊急の指示を出した。
「タイヤを使い切ろう。タイヤセーブはキャンセルだ」