
「ボクシングは甘くないと痛感した」なぜ井上尚弥はネリ戦に続く2回のまさかのダウンから8回逆転TKO勝利を手にできたのか…77年ぶりに世界戦最多KO記録を更新
リング上でのインタビュー。
「みなさん、この試合を見ていただき、殴り合いが好きだと証明できたと思います。凄く楽しかったです」
そう試合を振り返った。
2回のダウンシーンについては「非常に驚きましたけど、冷静に組み立て直すことができました」と語り「1ラウンドが終わって微妙に距離の調整ができたんですが、2ラウンドでズレがあった。3ラウンドからは絶対にもらわないようにしました」と、井上が得意とする距離の修正が逆転へのカギだったと明かした。
放ったパンチのうち49%が的中していたことを聞かされ「非常にタフな相手でした。オッズ的には、かなりの差があったが、相手は必至に倒しにきていた。ボクシングは甘くないと痛感しました」との反省が口をついた。
Amazonプライムビデオの日本のスタジオとつないだ中継でも元WBA世界ミドル級王者の村田諒太氏らの質問に答え、「ダウンを期待されると困りますけど、このダウンが、自分に火をつける。ファイターなんだなと思いました」と振り返り、「カルデナスは強かったです。映像を見ていたカルデナスの2、3倍は強かった。この試合に人生をかけて臨んできたんだなとリングの上で感じました」と、勇気ある挑戦者にリスペクトの言葉を送った。
「理想とする綺麗な終わり方はできなかった。でもカルデナスはいい選手で勇敢に打ちあってくれたので白熱したエキサイティングな試合ができたと思います」
一方のカルデナスもリングに残りインタビューに答えた。
「やはり井上はタフな相手でした」
素直な敗戦の弁。
2ラウンドのダウンシーンは「いいところに決まりました」という。
「彼はパンチにパワーがありました。最高の試合をしたいと臨んでいました。ダウンも奪うことができ、実力も示すことができたと思う。素晴らしい試合をお見せすることができた。2人にとっていい試合になりました」
1対16、あるいは、1対18まで絶対不利のオッズがつくアンダードッグの扱いのなかで、無敗のモンスターと大善戦をしたことに満足そうだった。
何より井上を困らせたスピードとパワーがあった。そしてボクサーにとって最も大切な立ち向かう勇気。井上がここまで苦しんだのは2019年11月のWBSSの決勝で対戦した元5階級制覇王者、ノニト・ドネア(フィリピン)以来だろう。
敗れてもカルデナスの評価は下がらない。
メキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」のトリを務めた。
2日のニューヨークのタイムズスクエアの特設会場では、問題児のライアン・ガルシア(米国)がダウンを奪われる精彩を欠く内容でローランド・ロメロ(米国)に判定で完敗して1年ぶりの復帰戦を飾れず、そのガルシアとの再戦を目指していたWBC世界スーパーライト級王者のデビン・ヘイニー(米国)も判定勝利。テオフィモ・ロペス(米国)もWBO世界スーパーライト級王座を統一したが、盛り上がりに欠けるファイトでKO決着はできなかった。3日にサウジアラビアで行われたスーパーミドル級の4団体統一戦では、WBC&WBA&WBO王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)が、IBF同級王者のウィリアム・スカル(キューバ)と大凡戦の判定勝利。途中レフェリーが「ボックス(戦え!)」を呼び掛けるほどだった。
それらの結果を見た井上は、「しょっぱい試合はできないな、という熱い思いがあった」という。それだけに「シンゴ・デ・マヨ」の最後にファン好みのベストファイトを見せることができたという自負がある。
「昨日、一昨日と、賛否両論がありましたが、僕が一番盛り上げることができたんじゃないかなと思います」