
衝撃!井上尚弥の12月サウジで計画のWBA世界フェザー級王者ニック・ボールへの挑戦は消滅か?5階級制覇への挑戦は来年5月の中谷潤人とのスーパーマッチ後に軌道修正の可能性が浮上
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)の日本人初となる5階級制覇への挑戦スケジュールが軌道修正される可能性が出てきた。井上の次戦は9月14日に名古屋「IGアリーナ」でのWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)戦。それをクリアすれば12月にサウジアラビアで1階級上げてWBA世界フェザー級王者のニック・ボール(28、英国)への挑戦が計画されていたが、その白紙撤回が検討され始めた。ボール戦の代役候補にはWBC1位のアラン・ピカソ(24、メキシコ、IBF&WBO1位のサム・グッドマン(26、豪州)らの名前が挙がっている。
「最終目標」のフェザー級転級には万全の準備が必要
当然と言えば当然の軌道修正かもしれない。
モンスターの12月のWBA世界フェザー級王者、ボールへの挑戦計画の白紙撤回が検討され始めた。当初、井上は9月14日に名古屋で最強挑戦者の呼び声の高いアフマダリエフを撃破した後に、12月にサウジアラビアで1階級上のボールのベルトへ挑戦するプランが計画されていた。昨年3年30億円の大型契約を結んだ「リヤドシーズン」の本拠地でのモンスター登場にふさわしいビッグカードだ。
5月9日には英専門サイト「ボクシングニュース」の取材に答えて、ボールのプロモーター「クイーンズベリー・プロモーション」の名物代表のフランク・ウォーレン氏が「やる気満々の井上陣営」との予備交渉がスタートしたことを明かしていた。
だが、その計画の軌道修正が検討され始めた。
井上には、さらに来年5月に東京ドームでWBC世界バンタム級王者、中谷潤人(M.T)とのスーパーマッチが計画されており、この試合は、中谷が1階級上げてのスーパーバンタム級で行われる予定。もしボールと12月にフェザー級で戦えば井上は再びスーパーバンタム級に戻すという大変な作業を余儀なくされることになる。
いくら不可能を可能にしてきたモンスターといえど、フェザー級へ向けての肉体改造をした後にまた階級を戻すのは無謀だ。あまりにも肉体的な負担が大きい。
井上は、5月4日に米ラスベガスでWBA1位のラモン・カルデナス(米国)に8回TKO勝利を収めたものの、2回にまさかのダウンを奪われ、カルデナスのフィジカルを押し出す戦略に対して苦戦した。フェザー級に上がり、しかも、突貫小僧のようなファイトが信条で、分厚い肉体を持つボールとの対戦となると、万全の肉体改造が必要になる。ある意味、教訓を得たカルデナス戦が、フェザー級転向へ向けてのスケジュールの軌道修正が検討されるきっかけとなったのかもしれない。
この計画変更を暗に示唆する井上の発言もあった。
井上はカルデナス戦の前日計量後のインタビューで、女性司会者に「ここまで(4階級)体重を上げてきましたね。限界としてどこまで上げられますか?」と聞かれ「最終目標としてひとつ上のフェザー級にはチャレンジしていきたいと思っています」と回答した。またカルデナス戦後の会見でも「スーパーバンタム級が適正階級。この階級でやれるまでやりたい」とも明かした。
そして米老舗「リング誌」のインタビューでは、さらに突っ込んで「フェザー級が私の限界だ」と断言。
「これ以上(階級を)上に上げることに興味がない。もし私が1m70の身長だったら話は違ってくるでしょう。しかし、フレーム単位でどれだけの肉体を構築できるかには限界がある。スーパーバンタム級でも私は一つ一つ筋肉をつけ体格を構築して挑戦している」と説明していた。
スパーリングでは、ライト級の選手を相手にしている井上には、スーパーフェザー級まで上げて、オスカー・デラホーヤ(米国)、マニー・パッキャオ(フィリピン)に続く史上3人目の6階級制覇王者への期待もあった。だが、井上は現実的な問題として最高のパフォーマンスを発揮できるのはフェザー級までと考えていて、しかも、適正階級は今のスーパーバンタム級だと感じている。