• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「那須川天心はプロの壁にぶつかっている」世界前哨戦でWBA世界6位を3-0シャットアウトもKO決着できずに猛反省…11月にも世界挑戦へ
那須川天心の左ストレートがクリーンヒットするもダウンシーンを演出できず(写真・山口裕朗)
那須川天心の左ストレートがクリーンヒットするもダウンシーンを演出できず(写真・山口裕朗)

「那須川天心はプロの壁にぶつかっている」世界前哨戦でWBA世界6位を3-0シャットアウトもKO決着できずに猛反省…11月にも世界挑戦へ

 プロボクシングの「Prime Video Boxing 13」が8日、有明コロシアムで行われ、バンタム級10回戦で、WBC1位、WBA、WBO2位の那須川天心(26、帝拳)がWBA6位のビクトル・サンティリャン(29、ドミニカ共和国)を一人がフルマークをつける大差の3-0判定で下して世界前哨戦をクリアした。11月にも初の世界挑戦の舞台が用意されているが、「倒し切る」という課題をクリアできなかった天心は「世界というものをもう一度見つめ直したい」と反省ばかりを口にした。また来年にもビッグマッチの実現が期待されているWBO世界同級王者、武居由樹(28)が所属する大橋ジムの大橋秀行会長(60)は、最終回の打ち合いを「プロ意識が高くスター性がある」と高評価したものの「プロの壁にぶち当たっている」との厳しい指摘をした。

「那須川天心である以上、求められるものは大きい

 塩試合では終わらせない。
 超満員で膨れ上がった有明コロシアムが異常な盛り上がりを見せた。最終ラウンド。ここまでポイントでは圧倒していた天心が、安全策に走らず、危険も顧みず倒しにきたのだ。
 スキンヘッドの怪人も応戦。壮絶な殴り合いとなった。
 ショートの右ストレートを打ちおろすとサンティリャンの動きが止まった。もう一発浴びせて、左アッパーから左右フックの高速コンビネーション。それでも仕留めきれない。サンティリアンは無防備に左右のフックを振り回してくる。チャンスだった。そこに那須川は渾身の左のカウンターを狙う。ショートのアッパーが当たった。残り10秒を知らせる拍子の後の左ストレートでロープにまで吹っ飛ばした。だが、無情のゴング。バッティングで左目上を2か所カットした天心は血を流しながら悔しそうな表情を浮かべた。
 判定はジャッジの1人が100-90、2人が99-91をつける文句なしの圧勝だった。天心がクリーンヒットを被弾することも、手数で圧倒されるシーンもほぼなかった。
 だが、口から出てくるのは、反省の言葉ばかりだった。
「相手がやりづらかった。理想としていたものがなかなか本番で出なかった。なかなかうまくいかない、が正直な感想。もっと鮮やかに、倒したいところもあった。もっと幅を見せられたかな。つめの甘さが出た。自分のボクシングをつきつめていかなくちゃいけない」
 10ラウンド目の殴り合いには塩試合では終わらせないという強い意思が見られた。
「そうなる前に決めたい。あの展開になる前にやることがある。最後はどんな選手でも出せると思う。普通7戦目なら満足してもらえるが、そうはいかない。(バンタム級には)強いチャンプがたくさんいる。そういうチャンプと戦っていかなくちゃいけないので、こういう勝ち方なら、自分を見つめ直さなくちゃいけない」
 この最悪の展開は予想されていた。
 サンティリャンは15戦14勝(5KO)1敗のキャリアを持つWBA同級6位のサウスポー。戦績が示すようにパワーはなく、これといって警戒するパンチはないのだが、天心が初めて対峙するサウスポーで、しなやかなボディワークとステップでガードも堅く簡単にはつかまらない逃げ足の速いボクサーだった。そこにフェイントを交えながら、リーチとスピードを生かしたパンチを繰り出してくるので、ペースを奪うのに苦労する危険性はあった。

 

関連記事一覧