
「那須川天心にKOの仕方をアドバイスしたって?」名門帝拳“秘密兵器”23歳の高見亨介が7.30横浜でWBA世界ライトフライ級王座にプロ10戦目で初挑戦
プロボクシングの「U-NEXT BOXING.3」(7月30日・横浜BUNTAI)の発表記者会見が11日、東京ドームホテルで行われた。豪華なトリプル世界戦でWBC&WBA世界フライ級王者の寺地拳四朗(33、BMB)がWBC4位、WBA3位のリカルド・ラファエル・サンドバル(26、米国)と防衛戦、3戦連続の世界戦となる元WBCフライ級王者の比嘉大吾(29、志成)がWBA世界バンタム級王者のアントニオ・バルガス(28、米国)に挑戦、そして“名門”帝拳の“秘密兵器”日本ライトフライ級王者でWBA同級1位の高見亨介(23)がWBA世界王者のエリック・ロサ(25、ドミニカ共和国)にプロ10戦目で初挑戦することになった。見所満載の興行の中で、超ホープの高見にフォーカスを当ててみた。
目標は3階級制覇で「拳四朗選手ともやりたい」
23歳の高見はリクルートスーツのような紺のスーツ姿で初めての会見に臨んだ。
「(田中トレーナー)繊大さんに就活かって一言をもらった。若々しい感じでいいのかな。
深くは考えていなかった。フレッシュに。自分の色を出しすぎないようにいこうかなと」
本当はホワイトでまとめたかったそうだが、拳四朗、比嘉と並ぶ場への遠慮があったという。
「自信がないと挑戦はしない」
記者会見ではそうとも言ったが、本田明彦会長が「(那須川)天心よりも生意気」という、その態度も、ビッグマウスも影を潜めていた。緊張もあったのだろう。
直訴が実った。
高見は4月8日に日本ライトフライ級王者の川満俊輝(三迫)を6回TKOで下してベルトを奪取するとリング上から、大胆にも「大口をたたかせて下さい。(本田)会長!世界挑戦させて下さい」と、世界戦を直訴したのである。
「言ってみるもんですよね」
本田会長は、その声を聞いて「まだ自分は無理ですとでも言うのかなと思ったんだけどね。やらせて恥をかかせようか」と、世界戦に動いた。
ただ「蹴りがあっても勝つんじゃないの?」と冗談を言うほど、高見の素質と能力を認めており、以前から「ライトフライならすぐにでも世界を獲れる」という話をしていた。
名門帝拳の秘密兵器。慎重な本田会長が10戦目でチャンスを与えることが異例だ。
高見は、目黒日大高時代にインターハイ、国体で優勝、2019年のアジアユースでも3位となり、パリ五輪を狙っていたアマ戦績43勝4敗のアマエリート。2022年7月にデビューして9戦9勝(7KO)の無敗で、わずか3年でチャンスを手にした。自分でも「早かった」という。
自己紹介を求められ、「スピードとカウンター。相手によって戦いを変えられる対応力、勝負にいけるところがストロングポイント」と、スラスラと言った。
1m66と、このクラスでは高い長身を生かしたスピードと、見るものを圧倒する高速連打が武器。加えてボクシングIQが高く、臨機応変にファイティングスタイルを変えることができる。課題といえば、まだ経験の少ないインファイトくらいだろう。
世界王者への憧れは、元6階級制覇王者で、7月に4年ぶりに再起して、いきなり世界挑戦するマニー・パッキャオ(フィリピン)だったという。
「小柄でも大きい選手を倒しにいく姿に刺激を受けた」
そして偶然にも、今回挑戦するロサの異名が“ミニ”パックマン。パッキャオの現役時代の異名パックマンのミニ版を名乗るほど、好戦的なスタイルである。
高見はニヤっと笑い、「どのくらい、ミニパックマンの名にふさわしいいのかを確かめたい。終わってから“違うぞ”と言いたい」と豪語した。
相手のロサは、8戦全勝(2KO)の好戦的なサウスポーで、プロ4戦目にしてWBA世界ミニマム級暫定王座を獲得し、その後、階級を上げて昨年12月にWBA世界ライトフライ級王者を獲得して2階級制覇王者となった。手数が多くディフェンスに柔軟性を持つテクニシャン。KO率は低いが荒々しくハードヒットもしてくる。ただ雑になる場面があり耐久性にも問題はある。
「うまい選手。しっかりとポイントをとってディフェンスもしっかりできてという印象」
高見はプロでサウスポーとの対戦経験はないが「元々サウスポーが得意で、アマでは10何戦やって負けたことがない」という。世界王者に簡単な相手などいない。苦戦はするだろう。高見にサウスポーへの苦手意識がなければ、初挑戦でベルトを奪う可能性は十分にある。