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カネロは前半戦はパワーとスピードで圧倒。終盤ゴロフキンに反撃されたがポイントの貯金が効き3-0判定勝利(写真・AP/アフロ)
カネロは前半戦はパワーとスピードで圧倒。終盤ゴロフキンに反撃されたがポイントの貯金が効き3-0判定勝利(写真・AP/アフロ)

なぜ“カネロ”アルバレスは3-0判定でゴロフキンとの3度目対決に勝利できたのか…終盤猛追も敗れたGGGは現役続行を宣言

 

プロボクシングのスーパーミドル級の世界戦が17日(日本時間18日)、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われ、4団体統一王者のサウル“カネロアルバレス(32、メキシコ)がWBA世界ミドル級スーパー王者、IBF世界同級王者のゲンナジー・ゴロフキン(40、カザフスタン)を3-0判定で下して防衛に成功した。両者の対戦は、これが3度目で、これまではカネロの1勝1分けだった。パワーとスピードで上回るカネロが序盤からフック、ボディの強打をヒットさせてポイントを重ねたが、ゴロフキンは8ラウンドから距離を詰めて反撃。終盤は手数が出始めてショートパンチでカネロのボクシングを封じ込めたが、3-0判定でカネロが決着をつけた。ダウンシーンのない技術戦にブーイングも飛んだが、4月に村田諒太(36、帝拳)を9回TKOで破ったゴロフキンは老獪なファイトが際立ち、試合後に現役続行を宣言した。またカネロは4月に敗れたWBA世界ライトヘビー級王者のディミトリ―・ビボル(31、ロシア)とのリベンジ戦を熱望した。

カネロがパワーとスピードで圧倒もGGGはスキルで対抗

 激闘を終えた2人の最強ボクサーは綺麗な顔をしていた。

 ジャッジペーパーが読み上げられる。一人目は116-112、残る2人は同じスコアで115-113。「スティル(防衛)」という単語が出た瞬間にカネロは両手を突き上げて、ゴロフキンは納得したかのように爽やかな笑みを浮かべた。

「trilogy(3部作)」と呼ばれて盛り上がり、4年ぶりに実現した3度目の対決は、ダウンシーンもなくKO決着とはならなかったが、判定に疑念が生まれた過去の2試合とは違い、判定結果に誰も異論をつけることのない戦いとなった。

 右目上を少しだけ切ったカネロがリング上でインタビューに答える。 「彼とリングに立てたことがうれしい。とても素晴らしい戦いができて、そこに関われたことがうれしいのだ。私は彼がタフなファイターだと分かっている。勝ててよかった。すべてを出しきった。メキシコのファンのみんな、そしてゴロフキン。ありがとう」

 これでカネロの2勝1分け。宿命の対決に決着はついた。

 試合前にカネロは「1ラウンドから倒しにいく」と公約していたが、蓋を開けてみると静かなスタートだった。様子見の1ラウンドは、どちらも決定打に欠き、ジャッジの2人はゴロフキンのジャブを支持した。  だが、2ラウンドからは、身長でこそゴロフキンに劣るが、まるで体の厚みが違うカネロのパワーとスピードの独壇場となった。

 鋭いステップインと共に繰り出すコンビネーション。左フック、ワンツー。特に左ジャブからつなげる右のボディショットが効果的で、ゴロフキンは、ステップバックとガードで防御してダメージにつながるクリーンヒットにはしないが、ジャッジにポイントを印象つけるには十分だった。

 3ラウンドにはカネロのワンツースリーの左ストレートがGGGの顔面を捉え、4ラウンドには左ジャブと左フックがヒット。5ラウンドには右のボディショットにバランスを崩したゴロフキンがつまずくシーンも。このラウンドはカネロの強烈な右フックもクリーンヒットした。

 ゴロフキンはほぼジャブしか打たず、カネロの決定打を避けるための慎重なディフェンス重視のスタイルを貫くため、当然、手数が減りペースを握れない。ジャッジ3人は揃って2ラウンドから7ラウンドまでの6ラウンドをカネロにつけた。

 だが、8ラウンドからGGGの反撃が始まった。

 勇気を持って距離をつめて、カネロが飛び込んで強打できる“間“を潰し、独特の角度から打ち込む”ゴロフキンフック”、アッパーを織り込みながら徹底したショートパンチを浴びせていく。9ラウンドにはロープにつめ右フックがヒットした。

 10ラウンドにはジャブがショートカウンターとなってカネロの動きが一瞬止まる。ゴロフキンは、完全にカネロのボクシングを封じ込めた。カネロは明らかにパワーダウンした。実は、試合中に左手を痛めていたという。カネロ曰く、「今後手術が必要」というほどの怪我で、その影響もあったのだろう。

 ゴロフキンの高度なスキルで形勢は逆転しかけたが、決定的な一打を浴びせるまでにはいかない。初めてスーパーミドル級に上げたというフィジカルの差も影響した。カネロには前半のポイントの貯金があり、ゴロフキンは倒さない限り勝利はないという状況で最終ラウンドを迎えた。

 2人の意地と誇りは、クリンチの時間へと変わってしまい、場内からはブーイングも漏れた。玄人好みの技術戦ではあるが、派手さには欠けた試合内容で「3部作」終了のゴングが鳴った。

 

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