
なぜ最下位の横浜F・マリノスの監督人事は迷走しているのか…ホーランド、キスノーボ監督の連続解任に新監督候補との交渉決裂
シーズンの折り返しを過ぎた段階で、5度のJ1リーグ優勝を誇り、鹿島とともに一度もJ2へ降格した経験のない名門マリノスを率いるには相当の覚悟と決意を伴う。プレッシャーを乗り越えながら仕事を完遂させるためにも、信頼の置けるコーチ陣を入閣させたいと望むのは自然の流れとなる。
しかし、マリノス側にも受け入れられない事情があったと見ていい。
マリノスの親会社で、発行株式の74.6%を保有している日産自動車は、今年3月期連結決算で6708億円もの巨額赤字を計上。国内外で7つの完成車工場を閉鎖し、計2万人ものリストラを計画するなど、経営危機の真っ只中にある。
補強資金にも影響が及ぶ可能性があるなかで、新監督だけでなく新たなコーチングスタッフを入閣させるとなれば、人件費が大幅にかさむ状況も避けられない。川井氏に関する質問に「相手もあるので」と言葉を濁した西野SDは、日産自動車の経営状況がマリノスへ与える影響に対しては、次のように答えている。
「親会社の財務状況は、今回に限らず常に影響するものだと思っている。ただ、いまのクラブの状況を踏まえて、最大限のサポートをしてもらえると考えている」
今月に入って、左サイドバックの主軸を担ってきた永戸勝也(30)がヴィッセル神戸へ移籍した。キスノーボ前監督の解任報道後は、昨シーズンまで2年連続でJ1得点王を獲得したFWアンデルソン・ロペス(31、ブラジル)と右サイドでの攻撃を支えるFWヤン・マテウス(26、同)の今夏の移籍が相次いで報じられた。
ロペスはシンガポールのライオン・シティ・セーラーズへの移籍が有力と、マテウスはUAEのアル・アインと鹿島が争奪戦を繰り広げているとされる。2人は20日の練習で汗を流しているが、自身の去就へ向けた質問を向けられると、そろって「いまフォーカスしているのは次の試合だけだ」と明言を避けている。
特にロペスはホーランド元監督のもとでプレーする状況に、自身の言動を介して、あからさまに不快感を示していた時期があった。西野SDが言う。
「半年に2度も監督が代わる、というところだけを見ると、状況をポジティブにとらえている選手はいないと思う。ただ、今回の報道で出ている内容がそこにつながっているのかと問われれば、そこは一概には言えないと思う」