• HOME
  • 記事
  • 野球
  • 「先を見据えた競争意識と常勝軍団への決意」なぜ阪神の藤川監督は走塁ミスを犯した豊田寛を5回で“懲罰交代”させたのか…その狙いと波及効果とは?
阪神の藤川監督が鬼になった(資料写真:Imagn/ロイター/アフロ)
阪神の藤川監督が鬼になった(資料写真:Imagn/ロイター/アフロ)

「先を見据えた競争意識と常勝軍団への決意」なぜ阪神の藤川監督は走塁ミスを犯した豊田寛を5回で“懲罰交代”させたのか…その狙いと波及効果とは?

 また藤川監督は「そのあとに島田が出て、彼もいままでいろんなことがありながらやっている中で、自分が前に出るプレーが多分に見れた。切磋琢磨するというチームのいいところも出て最後(勝利に)つながった」とも続けた。
 島田は7回一死から代打澤井のレフト後方を襲う打球を背走してキャッチする好プレーを見せ、その裏の最初の打席では先頭打者として三遊間ヒットを放ちチャンスメイクした。8回二死三塁の追加点機には、ショートゴロに倒れたが、爪痕は残した。
 スポーツ各紙の報道によると、テレビインタビューの後の囲み取材で藤川監督は、「ファームでも自分に置き換えて常にやれているかどうか。全体に対するメッセージになる」と、この懲罰交代が、一軍昇格を狙うファームの若手にも、最低限やるべきことと、何を重要かと考えているかの「藤川イズム」を徹底するメッセージであったことも明かしている。
 巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた球界大御所の広岡達朗氏は、「競争の原則が働いていないチームは強くならない。私は、監督時代にボーンヘッドや私生活でもやるべきことをやっていない選手には、途中交代は当たり前で、2軍落ちや、高額の罰金などの厳罰を科してきた。それがチームに緊張感を与え、また監督の野球に対する考え方をチーム全体に浸透させることにつながる」という持論を貫き、日本一チームを構築してきた。
 木浪が4月19日の広島戦で3つのエラーを犯して翌日から小幡にスタメン交代した際には、その懲罰交代をこう評価していた。
「今の若い世代の選手は精神的にも弱く、モチベーション監督がもてはやされているそうだが、そんな生ぬるいことでは常勝チームは作れない。私は、まだまだ藤川は勉強中だと思っていたが、この厳しい姿勢は大賛成だし支持したい。チームの選手層が揃っているからできるのかもしれないが、藤川が持ち込んだ競争の意識は、選手を必死にさせレベルアップさせる」
 まさにチームを常勝軍団にすべき厳しさを虎の若き指揮官が示したことになる。
現在のところまだポジションが固定されていないのはレフトだ。期待されていた前川が壁にぶち当たり、ここまで豊田、高寺、中川、井上、島田の6人が起用されている。またレフト問題を解消するため、三塁の佐藤にライトを守らせ、レフトに森下が移動した試合も25試合あった。1番から5番まで固定できているチームにおいてウイークポイントともいえるポジションだけに、なおのこと藤川監督は、そこに競争の原則を持ち込んでいるのだろう。それは勝負となる9月の戦いだけでなく、来年、再来年を見据えた藤川監督のチームマネジメントである。
 ただ一方で懲罰交代に対しては「失敗したら代えられるという恐怖を選手に植え付けて、委縮させ、結果的にその選手を潰してしまう危険性もある」という球界OBの意見もある。ある程度の我慢と、失敗した選手に再チャンスをどう与えるかも重要なポイントになるだろう。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

関連記事一覧