
「ブチ切れた」緊迫舞台裏…角田裕毅はベルギーGPでタイヤ交換が遅れた陣営のミスに無線で放送禁止用語の“Fワード”を連発して激怒…その後交信を無視していた
陣営との交信を無視するほどブチ切れていた角田が、次に言葉を返したのは残り残り10周あまりとなった段階だった。ウッド氏から「タイヤは最後まで持ちそうか」と問われた角田は「わからないけど」とぶっきらぼうに返し、さらにこう続けた。
「ずっと(ガスリーの後ろで)詰まっているし、これまでとは何か変わったことをしないと。このままならポイント圏外なんだから、何か指示をくれ」
ウッド氏からは、「了解。このままステイアウトしよう」とだけ返ってきた。2度目のピットインをせずに現状のままで戦おうという選択。しかし、43周目にハースのオリバー・ベアマン(20、英国)に、ファイナルラップの44周目にはヒュルケンベルグにも抜かれた角田は13位で、ベルギーGP決勝を終えた。
角田はレースを終えた後に「チェッカーフラッグだ。リチャージしてくれ」と労われても無言。ピットレーンを走っている間も、両手を何度も振り上げ、やり場のない怒りを表現していた。
直後のフラッシュインタビューで角田は感情を露にしている。
「チームとの間でコミュニケーションミスがあった。最後はタイヤが完全に摩耗していたし、非常にフラストレーションが溜まる展開になった」
26日の公式予選直前に新型フロアが装着されるなど待望のアップグレードしたマシンが角田に急遽、投入された。セッティングにも改良が施され、5月のマイアミGP以来、7戦ぶりとなる公式予選3回目(Q3)へ進出した。角田にしてみれば、そのマシンで得た7番グリッド獲得の勢いを角田としては決勝へ持ち込みたかったのだろう。
F1公式で映像が公開されたフラッシュインタビューはやがてウッド氏や陣営の目に留まる。チーム内が険悪な雰囲気となるのを危惧したメキース代表が、角田に対して自らが謝罪する異例の行動を起こした。事態の収拾を図ったと見られる。
7月上旬に電撃解任されたクリスチャン・ホーナー前代表(51、英国)に代わって就任し、ベルギーGPが初陣だったメキース氏は、姉妹チームのレーシングブルズ時代から厚い信頼関係で結ばれてきた角田へ、メディアを通じてこう謝罪している。
「今日は裕毅にピットコールをするのが遅すぎたため、獲得できたはずのポイントが失われてしまった。それまでいいレースをしていた裕毅には、本当に申し訳なかったと思っている。メカニックたちは(ダブルピットインの)準備ができていたので、次に同じ事態が起こったときには、必ずうまくやってくれると信じている」
決勝から一夜明けてF1公式サイトで発表されたデータでは、角田のマシンのタイヤ交換に要した2.17秒は、全車のなかで最速をマークしていた。ウッド氏の判断遅れが決勝の展開に重大な影響を与えたが、レッドブル陣営はそれを取り戻そうとタイヤ交換でベストの仕事をした。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務める重鎮、ヘルムート・マルコ氏(82)は、英国のF1専門メディア『PLANETF1.COM』で次のように語っている。
「私たちは次戦のハンガリーGPへ向けて、新しいものを用意している。それがどうなるのかを見てみよう」
チームは8月1日開幕の次戦ハンガリーGPへマシンのさらなるアップデートを予定している。最強マシンを手にした角田は今度こそ入賞を果たすことができるのだろうか。