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巨人の森田駿哉がヤクルト戦で初先発初勝利(写真・スポーツ報知/アフロ)
巨人の森田駿哉がヤクルト戦で初先発初勝利(写真・スポーツ報知/アフロ)

28歳で初先発初勝利の巨人“遅咲き左腕”森田駿哉は11年前の夏の甲子園で亡くなった名スカウトが「ナンバーワンのドラフト候補」と見初めた逸材だった

 最速は149キロ。1m85の長身からステップ幅が短く、角度をつけて腕をアーム式に振り抜く。初見の打者はタイミングがとりづらく「インコースを攻めていくのが武器のピッチャー」と自負するほど、左打者のインサイドをツーシームで容赦なく攻めていく度胸があり、右打者のアウトコースへのコントロールがあった。
 対戦したヤクルトの高津監督は、「芯に当たった鋭い当たりはほとんどなかった。もっと積極的にいって欲しかったが、甘いボールを見逃して打たされる感じになった」と悔しがった。
 11年前の夏の甲子園。大阪桐蔭が優勝した大会のマウンドで富山商エースの森田は躍動していた。その素材に目をつけていたのが、古田敦也や宮本慎也、栗山英樹監督らをプロの世界へ導いた名スカウトの片岡さんだった。当時78歳。
 大会を通じて「ドラフトで指名すべき逸材」をピックアップしてもらったが、そのメモには、投手の名前が5人書かれていて森田の名前が一番上にあった。ちなみにこの大会には、智弁学園の岡本和真も出場しており「10年に一人の右のスラッガー」と片岡さんは評価していた。
 片岡さんは森田を「大会ナンバーワン左腕」と称賛していた。
「うなるようなボールを投げる、いわゆる特Aの投手は今大会にはいなかったが、ナンバーワン左腕は森田だ。左腕は使い勝手がいいのでプロのスカウトは特に気をつけて見る。体を上下バランスよく使えて、ストレートもそこそこ。とにかくスライダーのキレがいい。(法政)大学進学希望だと報道で見たが、プロに進んでも早い段階でワンポイントで通用すると思うし、将来的には左の軸になれる素材」
 森田は1回戦の日大鶴ヶ丘戦を6安打、8奪三振で完封勝利。次の関西戦でも、守りのミスで1点を失ったが、4安打11奪三振の力投。日本文理戦では途中降板してチームはサヨナラ負けを喫したが、ナンバーワン左腕の評価が高まっていた。
 ただ法大への進学が決まっており、プロへの志望届は出さなかった。大学時代は肘の手術などで、わずか1勝に留まり、ドラフトでは指名は見送られ、Honda鈴鹿に進んだ2年目にも指名漏れした。
 だが、巨人のスカウトは、社会人5年目を終え、27歳となっていた左腕を見逃さなかった。2023年のドラフトで1位の西舘に次ぐ2位で指名した。巨人のドラフト史上最年長の指名だった。ルーキーイヤーは1軍キャンプに抜擢されたが、再び肘に異常が発生してクリーニング手術を行い、1年目は棒に振った。それでも亡くなった名スカウトと巨人のスカウトが見初めた素質に狂いはなかった。
「もちろんこうやってチャンスつかんでくれたんで、次も(先発で)いってもらおうかなと思っています」
 阿部監督は次回も続けて先発で起用することを約束した。中6日なら13日の中日戦、中8日なら15日の阪神戦がプロ2度目の先発予定となっている。

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