
「何が本当なんだ?SNSに振り回される馬鹿げた社会になった」広陵の異例の大会途中辞退に“反対論”を掲げていた93歳の日本球界大御所が怒りと嘆き…「高野連も戸惑っているんじゃないか」
広岡氏は改めてこう声をあげた。
「私は辞退する必要などないと今でも思っている。学校側が、これ以上、耐えきれなくなって辞退を決定したんだろう。第三者委員会が調査中の別の事案が表沙汰になってそこに監督、コーチらの暴力行為が加わっていることが問題になったようだが、その結論が出ていない状況で、広島県大会に出場したことに問題があるなら、高野連が『第三者委員会の結論を出さないと広島県大会に出られない』と指導して調査を急がしておくべき。それを知った上で出場を認めたんだから、負けていないのに大会の途中で甲子園を去れというのは、あまりにも子供達が可哀そうだ。そもそもSNSの時代にすぐに情報を公開しておかなかった高野連にも問題がある。今回の広陵の辞退には、高野連も動揺して戸惑っているんじゃないか」
日本高野連は3月に審議会を経て厳重注意処分を下した際に公表はしなかった。日本学生野球憲章では、注意・厳重注意処分に関しては、未成年保護の観点に立ち、公表しない規則になっているため。しかし、SNS全盛の時代にもはや「個人の保護」など守られない。
広岡氏は、夏の甲子園は大手マスコミの朝日新聞社が主催に加わっていながら、時代錯誤の対応をしてきたことにもあきれた。
ただ1月の暴力事案でも、学校側の調査による発表と、SNSによる告発には、加害者の人数や内容にズレがあり、また別の事案でも、被害生徒が所轄の警察署に被害届を提出したにも、かかわらず学校側は「いつどこで誰がというところが全て確認できないような申告。学校でも聞き取りを行ったが十分できなかった」(堀校長)と認めず、第三者委員会が設置されるたが、できるだけ穏便に済まそうとしてきた節が見受けられる。
ちなみに高野連は「もし新しい事実が判明すれば、審議をやり直さなければならないかもしれない」ともコメントしている。
広岡氏は最後にこうメッセージを残した。
「監督、部長、コーチも責任を取るだろう。本当は何があったかはわからない。暴力はいかん。暴力がまかり通るようなチームなどあってはならないが、厳しさの中で人間は大きくもなる。高校野球は教育の場。では、今回のこのやり方が教育なのか。私は辞退という結論も含めて責任を持つべき大人たちが判断を見誤って、子供たちに悲しい思いをさせたとしか思えない」
部員には辞退を9日夜に通達され、チームをのせたバスは10日午前9時半に広島へ向かって出発した。堀校長は「選手は失意のどん底だったと思います」と説明している。今後は学校の副校長で理事でもある中井監督、その中井氏の長男である淳一ぐ部長らの指導体制がどう見直されるのか。秋の大会への出場是非はどうなるのか、などの問題が残る。
このような悲劇は二度と繰り返してはならないだろう。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)