
「井上尚弥のようなボクシングができるかも」WBO王者の武居由樹が9.14名古屋で那須川天心の元スパー相手メディナを迎え討つ…無謀に殴り合えば危険なランキング1位の指名挑戦者だ
参謀の八重樫トレーナーはそのやりとりを聞いてクビをひねっていた。
現役時代にWBCフライ級王座を獲得した相手はサウスポーの五十嵐俊幸(帝拳)で、ファイターがサウスポーにどう突っ込んでくるかを逆の立場で熟知している。
「一筋縄ではいかない。打たせて入ってくる選手。一発でひっくり返せればいいがそんなにうまくいかない。入らせないのが一番だが、入られた時にどうするかの練習もしてきた」
秘策はある。
「西田戦は参考にはなるがあれは前の試合。帝拳(のスパー)でキャリアを積んで変わっている。サウスポーが苦手だとの先入観では見ていない。動き的にサウスポーは苦手のようだが、メキシカンなんでわかんない。そういう戦い方かもしれないしね。ただ遠い距離は好きじゃない。自分のタイミングで打ち込むのが好きな選手。そうなると手をつけられない。本来は、打たせずに打つ井上尚弥のボクシングをやらなきゃいけない。でも、それができるかもしれないというタイミングがある」
モンスターのボクシングに武居を重ねたのだ。
「強打でびびってくれたり入りたくても入れない状況を作る。武居は倒すと言っているがそうならないときに(判定で)手が上がるプランも作っている」
そして八重樫トレーナーは大橋会長流に「弱点は3つある」とニヤついた。
誘いに乗って前へ出ると左フックが飛んでくる。打ち合うにしても武居の距離をいかにキープするかがポイントになるだろう。
「武居由樹らしく戦うのが一番、倒しにいくボクシングをする。ユッタポン戦で初めて左フックで倒した。右肩を怪我したおかげで新しい武器が手に入り、左のレパートリーは増えた。色々組み立てながら考えてボクシングしたい」
武居は自分にそう言い聞かせた。
この指名試合をクリアすると、次はいよいよK-1から転向してきた武居がデビュー時から熱望している天心とのビッグマッチがターゲットとなる。
だが、11月にWBC世界同級王座決定戦に挑む天心の相手が同門の元WBA世界同級王者の井上拓真となる公算が高くなってきたためか、会見でその話題が出ると「一旦、それは置いときましょう。まずはメディナ、ここが勝負どころでもある。ここを勝たないと何も始まらない」と、シャットアウトした。