
「まだ現実を受け入れられない」武居由樹が号泣TKO負けでWBO王座から陥落…那須川天心とのドリームマッチも遠のく
だが、武居はサウスポーの利点を生かそうとせずに打ち合いを挑み、メディナは懐に入ることに苦労せずに済んだ。まだボクシングキャリアの浅い武居には、得意とする距離に幅がないという弱みがあるが、まさにその距離でメディナは戦った。
研究されていたのだろう。
「なんか全部自分のパンチが読まれていたそれに合わされたんじゃないか」と武居も言う。
リングサイドで観戦した堤もショックを受けていた。堤は正規王者のアントニオ・バルガス(米国)との王座統一戦が待ち受けているが、その先に睨む統一戦のターゲットとして武居の名前をあげていたのだ。
「寂しい、悔しい気持ちがある」
堤は、5月に単身メキシコに渡り、修行を積んだが、現地でメディナとも4ラウンドのスパーをしたという。
「彼がいい選手だとはわかっていた。序盤の動きが固いところでカウンターがもろに当たった。序盤のダウンが尾をひいたね。もっと動き回った方が良かったかもとも思うが、僕も同じ立場なら、ダメージを与える方に走る。同じ判断をするかも。西田戦の時は、サウスポーが苦手ですよ、という戦い方だったが、日本に何回か来て強くなっている。一方の武居のボディのタイミングは良かったし、逆に長引けば、どっかで削って倒すチャンスがあるんじゃないかなと思っていたけど、打たせ始めると、メディナは調子に乗っちゃう。最後は右のアッパー。メディナは、あの距離からの右のアッパーがめっちゃ上手いんですよ」
メディナは、今後の対戦希望ボクサーとして天心ではなく堤の名前をあげた。
「天心はグレートな友達、堤とは縁があるように感じる」
だが、堤は「嫌ですよ(笑)。プレッシャーが強くてパンチもある。スタイル的に僕は、殴り合わなきゃいけないのでハイリスクな相手。あまり対戦相手としては見ていない。やっかい。いろいろと考えないといけない緊張感のある選手」と具体的なターゲットとしては考えていない様子だった。
一方の武居は対戦を熱望していた天心戦は、実現の可能性が一歩遠のく形となった。そもそも天心は、WBCの王座決定戦で、武居の同門である井上拓真と戦う方向のため、その時点で運命の歯車は少しズレ始めていた。
ただ天心は武居がメディナに敗れることを予想していたのか。
「どんなことがあってもいずれ戦うことになる」とも話していた。
武居は今後について「ゆっくりしてから答えを出したい」と話すにとどめた。
現役時代に何度も敗戦という挫折から立ち上がり3階級を制覇した八重樫トレーナーが、その気持ちを代弁した。
「武居のボクシングというものが研究されていた。さらに裏をかくような動きだったり、また新しい武器だとかを考えていかねばならない。自分の責任でこれから修正してまた勝利したい」
メディナへのリベンジか、それとも他団体のベルトか。
武居の本当のボクサーとしてのチャンピオンロードは、負けを知った、この日から始まるような気がする。