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連覇を果たしたソフトバンクの小久保監督にも変化が見られた(資料写真:Yonhap/アフロ)
連覇を果たしたソフトバンクの小久保監督にも変化が見られた(資料写真:Yonhap/アフロ)

「もう誰も上沢への批判や甲斐の穴の話をしなくなった」なぜソフトバンクは苦難を乗り越えて連覇を果たしたのか…「失敗を力に。小久保監督の思考も変化した」

 甲斐の退団に関しては「海野、谷川原、嶺井で大丈夫か?」の声があがったが、球団は人的補償で獲得可能だった巨人の小林を取らなかった。そこには「若手を育成するチャンス」という元名捕手の城島CBOのブレない方針があった。
 そして海野が、80試合で先発マスクをかぶり、中心捕手となり、モイネロ専属で嶺井を使って38試合、谷川原が10試合、渡邉陸が12試合で先発出場。谷川原は外野でも起用されて139試合を乗り切った。
「誰も甲斐の問題を口にしなくなった。甲斐が怪我で巨人で後半に試合に出なくなったこともあったんだろうけど海野が見事にその声を消した。守りが安定。打撃もそこそこの数字を残して(打率。226、21打点)、なによりバントで送るところでは確実に決めた。嶺井も打撃で持ち味を出した。一度、3人全員が出場して最後は谷川原が外野を守ったことがあったが、最悪の場合は、谷川原が捕手に戻ればいいのでチームの選択肢も増えた」
 海野の23犠打は現時点でパ・リーグトップタイだ。
 もうひとつの問題が上沢へのバッシングだった。日ハムの新庄監督が「悲しい、寂しい」と発言。さらに「ポスティングで行って1年でダメでソフトバンクに行く。この流れは止めて欲しい。誰に何と思われようがプロ野球にとってよくないものに対して言っているだけ」とルール改正を訴えたことで日ハムファンがSNSで「裏切りだ」などと騒いだ。
 その影響もあったのだろう。上沢は、6勝6敗と苦しみ7月15日には2軍落ちするなど本来の実力を発揮できていなかった。
 だが、8月1日の楽天戦から復帰すると、負けなしの6連勝。8、9月の防御率は1点台で勝ち星を12勝6勝とした。
「上沢も悩んでいたが、誰ももう何も言わなくなった。来た当時は140キロそこそこしか出ていなかったが、今は150キロを超えるまで戻した。そういう努力をファンも見ている。ルール違反をしたわけではない。阪神の藤浪や青柳がシーズン中に横浜DeNA、ヤクルトに復帰したことを阪神ファンは応援していたくらいだったしね」
 上沢12勝、モイネロ12勝、有原、大関が13勝と、4人の12勝以上のローテー投手が優勝を支えた。
 小久保監督も「打者陣が苦しい中で最少失点に切り抜けながら先発の軸になる投手がローテーを間隔をあけずにしっかり守ってくれたおかげで、この勝ち星までたどりついた」と称えた。
 5月3日まで最下位だったチームは6月20日にBクラスから脱出し、交流戦で優勝を遂げ、7月29日に92試合目で初めて首位に浮上し、日本ハムとのデッドヒートを制止て、2年連続の頂点に立った。
 小久保監督は「昨年日本一に届かず、オフに悔しい思いをした。今日まではリーグ優勝のことしか頭になかったが、いかに日本一になるかに頭を切り替えて取り組みたい」と、昨年横浜DeNAに敗れた日本一奪回へ照準を切り替えた。
 その前にクライマックスシリーズを勝ち抜かねばならない。ファーストステージを勝ち抜いてくるのは、日ハムなのかオリックスなのか。ソフトバンクの戦いはまだ終わらない。

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