「衰えではない。次が過去最強を作れる最後の1試合」なぜ武尊はTKOで劇的再起を飾るも来年4月29日「ONE175」のロッタンとの再戦での引退を電撃発表したのか?
34歳という年齢と向き合う中で、今回は練習方法やコンディション作りなど取り組み方を変化させた。オーバーワークになることを自制した。3月の敗戦から7か月しか経過していなかったが、武尊は、いきなりその成果をケージ内で見せた。
1ラウンドから圧倒した。まず右左のフックから右をかぶせて最初のダウンを奪う。ピューリックが立ち上がり反撃してくると、不敵な笑いを浮かべて、今度は右のオーバーフックで2度目のダウン。第2ラウンドには右のカーフキックで足を引きずらせて3度目のダウンを奪った。超攻撃的な武尊がそこにいた。
「ONE仕様のスタイルに変えていたところがあった。今回は昔の自分を見て昔の戦い方にやり直した」
ONEでは、スーパーレック・キアトモー9(タイ)、ロッタンとビッグネームのムエタイの強豪と拳をあわせて2つの黒星を喫していた。レベルの高い強打者との対戦にディフェンスに意識が傾いていた。おそらく武尊の言うONE仕様とはそれだろう。だが、この日の武尊はK-1時代の荒々しさを取り戻していた。それはリスクと背中合わせのスタイルであり、実際、この日も被弾はあった。だが、前傾姿勢で前へ出るから、その威力も半減、何しろモチベーションとアドレナリンの量が違っていたのかもしれない。7月29日にタレントの川口葵さんとの結婚を発表、戦う理由がひとつ増えた。
試合後、その右手は親指付近から包帯で固定されていた。試合で痛めたのか、試合前に痛めたのか不明だが、34歳の肉体はもう限界に近い。
だが、武尊は次戦で引退を決めた理由を「トータルで考えてきたこと。衰えたからではない」と限界説を否定した。
「今が強い体、強い武尊を作れる一番最後の時期かな。新しいコンディションの作り方や練習方法は調整、実験段階だけど、うまくはまった。次が過去最強を作れる最後の1試合かなと。最後の試合と決めた」
最強の武尊、そして最高の戦いをファンに届けたいとの思い…だが、武尊は、その最強の姿を見せることは、もうあと1試合が限界だと自らが感じているのだ。
武尊らしい引き際の美学なのかもしれない。

