井上尚弥vs中谷潤人の“代理戦争”?「負けられない理由が増えた」桑原拓が中谷の米ジム仲間である“仮想WBO王者”を演じたモンスターから秘策を授かる
井上尚弥の助言を加え、戦略もできあがっている。
「前半と中間距離での攻防だと思う。相手の嫌なところをどんどんついていく展開。っ相手をいらいらさせたい」
桑原の武器はスピードを生かしたアウトボクシングだ。
ただオラスクアガを相手に一方的に動くだけではペースは奪えない。確実にパンチを当ててポイントはピックアップしていかねばならない。
オラスクアガは3月の京口紘人(ワタナベ)とのV2戦に3-0判定勝利しているが、内容的には拮抗していた。それは京口が足は使わず、終始プレスをかけて打ち終わりにショートのカウンターを浴びせる展開を作ったからだ。終盤には根負けしたオラスクアガが、逆に足を使いカウンター戦法に切り替えたほどだった。プレスをかけて、打ち合う場面は作らねばならないし、そこで、オラスクアガを削っておく必要もある。
「打ち合う覚悟もできているし、そこでどう対処するかは、松本さんと何パターンかやってきた。どの戦略を選択するかは、当日のコンディションと、ひらめき次第」
松本好二トレーナーも、中盤に必ずやってくるオラスクアガの怒涛の攻撃にどう対抗するかが勝負のポイントとみている。
「そこを乗り越えれば終盤のボクシング、スピード勝負になれば負けません」
パワー対策は、大晦日にWBA世界ライトフライ級挑戦者決定戦に挑む同級2位の吉良大弥(志成)と、5ラウンドのスパーを2度やり抵抗力はついた。
同級生で同じ興行のメインでノニト・ドネア(フィリピン)と団体内統一戦を戦うWBA世界バンタム級王者の堤聖也(角海老宝石)とも拳を交えてプレスへの対策も練った。オラスクアガのパンチにさらされても怖じ気づくことはない。
「オラスクアガは攻撃的。チャンピオンのペースにさせたら怖い。その辺の駆け引きで、上回ってチャンピオンの良さを殺していければ勝ち筋も見えてくる。苦しくなっても、いい展開になっても、慌てないことです」
報道陣の中には、現役時代にルディトレーナーの門下生だった元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏が、“スパイ”のように紛れ込み、鋭い視線を送っていた。
「京口が作ったような展開に終盤までに持ち込めるかどうか。やはり正確性という点ではトニーには粗さがある。その隙をどう突けるかだと思う」
桑原が不利であることは間違いないが、伊藤氏が言うように勝ち目がないわけではない。しかも井上vs中谷の代理戦争として、チーム大橋の力が結集するのだ。12.17の両国にビッグアップセットが起こるかもしれない。

