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「穴口選手の命を無駄にするな」事故検証委員会が報告した結論とは…再発防止の第一歩としてJBCとJPBAが合同で医事講習会を実施

 プロボクシングのJBC(日本ボクシングコミッション)とJPBA(日本プロボクシング協会)の合同主催による医事講習会が5年ぶりに後楽園ホール展示場でジムの関係者79人が集まり開催された。昨年12月の日本バンタム級タイトルマッチのダメージが原因で逝去した穴口一輝選手の問題を調査していた事故検証委員会からの報告並びに再発防止策が明らかにされ、JBCは提案されたジムに健康管理責任者を置くことを義務づけることや、セコンド4人制、タオル投入などの改善策に乗り出すことになった。また目に余る体重超過の対策として専門家を招き「水抜き減量のメカニズムと危険性」についての講習会も開かれた。

 当日体重が約6キロも増えていた

 

 講習会の冒頭で、JBCの萩原実コミッショナーが、こう挨拶した。
「プロボクシング界の課題として、健康管理と安全性の向上が重要な位置づけとなっている。まことに悲しい出来事、穴口選手と坂間(叶夢)選手のご逝去があった。たゆまない安全向上を求め、この先のボクシング界を運営していきたい。(この講習会が)少しでもお役に立つことを念じて、実りある時間を提供できることを確信している」
 そしてJPBAのセレス小林会長も「事故が限りなくゼロに近くなる業界にしていきたい」との誓いを口にした。
 悲しい事故が起きたのは、昨年12月26日に有明アリーナで優勝賞金1000万円の「井上尚弥4団体統一記念杯・バンタム級モンスタートーナメント」決勝として行われた日本同級タイトルマッチ。穴口選手が王者の堤聖也(角海老宝石)のベルトに挑戦した試合は、挑戦者が4度ダウンを奪われながらも、不屈の闘志で盛り返し、10ラウンドまでもつれる大激戦となった。最終ラウンドにダウンを奪った堤が判定で勝ったが、試合終了直後のリング上で穴口選手の足が痙攣するなどの異変が起き、その後、医務室で意識を失い、救急車で救急搬送され、脳外科医が2人待機していた病院でただちに開頭手術を受けた。
 その後も意識が戻らない状況が続き、2月2日に帰らぬ人となった。この試合は2023年度の年間最試合(世界戦以外)に選ばれた。
 JBCは弁護士の岡筋泰之氏を委員長に法律、医学、メディア、試合運営などの専門家6人による事故検証委員会を立ち上げ、3度の委員会を開き、関係者のヒアリングなどを行った上で、事故の原因調査及び安全管理の検証、そして今後の再発防止策をまとめた。
 その「事故検証委員会報告並びに再発防止策」の発表は、コミッションドクターである野中雄一郎氏(慈恵医大脳神経外科・教授)から行われた。
 委員会の調査、報告によると、後方視的に見て、試合を通して穴口選手にダメージの蓄積があり9ラウンドまたは10ラウンドに「右急性硬膜下血腫」を発症した可能性はあるが、試合を中断させるまでの異常挙動は認められず、事故の兆候を見つけることは難しく「試合を最後まで継続したJBC及びレフェリーの判断に大きな問題はなかった」とされた。
 穴口選手は、試合後、足が痙攣したが、自力歩行でリングを降りて控室に向かったが、徐々に意識が低下し、トレーナーの肩を借りて医務室に入り、待機していた救急車で19時45分に有明アリーナから病院へ搬送された。20時10分ごろに到着し、21時からただちに開頭手術が行われるなど、措置は敏速に行われたことが確認された。
 自力歩行させ、担架を使わなかったことに批判的な声はあったが、医学的見地から野中氏は、「担架を使ったからといって症状の軽減または死亡結果の回避につながったと断定することはできない」との見解を示した。
 また穴口選手が計量後の当日体重がリミット(53.52キロ)より11%(5.88キロ)も増加しており、減量に苦しんでいた形跡が見られることから、体調管理、試合までのスパーリング、トレーニングの状況なども調査された。だが、真正ジム側に穴口選手の体重などの管理状況を詳しく知る関係者が少なく「詳細を知ることができなかった」という。そのため報告書では「これらにまったく問題がなかったと即断することはできない」と結論づけられた。

 

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