時差6時間“サウジの井上尚弥”は100倍怖い?!5月に対戦辞退のピカソをけなさず「逃げたんじゃない。ファイトマネーの問題」とかばってリスペクトするスーパースターの矜持
観客の顔が見えるキャパシティなら雰囲気が変わり、感情とボクシングに影響を及ぼす可能性を懸念していた。つまり力むということだろう。だが、「3,4000人ですか?。後楽園ホールくらいかなと思っていた。れはそれでやり辛いんだけど、それなら大田区総合体育館くらいだから気にはならないですかね」
そう納得した。
「環境を整えてもらった。いいパフォーマンスを出せる」
ピカソには気の毒だが、最高のモンスターがサウジのリングに登場することになる。
ピカソとは5月にラスベガスでの対戦候補で合意していたが、直前になって辞退してきたため、ラモン・カルデナス(米国)に変わったという経緯がある。「井上とやったら1ラウンドで倒される」との声が多く周辺関係者の耳に届き、父親が「今ではない」と恐れをなして辞退を決めたとされるが、事実上、「逃げた」との批判を浴びた。
だが、この日、井上は、裏事情を明かして、その説をこう覆した。
「逃げたんじゃないんですよ。これは正直な話。ファイトマネーの問題じゃないですか。もともとサウジでやるという話がピカソ陣営にもいってたんじゃないですか。それがラスベガスとなると、ファイトマネーも変わってくる。結果、ピカソはこれを望んでいたんじゃないですか」
つまりこういうことだ。
リヤドシーズンのサウジとラスベガスではファイトマネーは倍以上変わってくる。ピカソは、サウジでの井上戦が来るまでチャンスを温存したというのだ。
「逃げた」と罵倒してもおかしくなかったが、あえて井上は裏事情を明かしてピカソをかばった。「リスペクト?もちろんですよ」。こういう姿勢こそ、モンスターがスーパースターであり、本物のパウンドフォーパウンドを狙うボクサーである証拠だろう。
ちなににリング誌で1位だったテレンス・クロフォード(米国)が引退を表明したことで、この試合の内容と結果次第では、井上が1位に返り咲く可能性は高い。
舞台上でそのことに聞かれた井上はこう答えていた。
「クロフォードの引退は、誰しもかいつかくるときこと、PFPの1位になるにふさわしい試合を展開していきたい」
一方の対戦相手のピカソは「この日をずっと待っていました。準備は万全です」と笑顔で応え、井上が勝利を前提に来年5月に東京ドームでの中谷潤人戦を計画していることについて聞かれ、不愉快な顔を浮かべることもなく、こう答えた。
「その試合の噂は耳に入っているが、私は気にしていない。私が勝つと信じている。最強の挑戦者と言われていないのかもしれないが、メンタルは強い。準備も万全だ、家族のためにもベストを尽くしたい」
だが、ピカソは井上にとって役不足だ。
井上はピカソの勝利宣言を海外メディアから聞かされて「それくらいの意気込みがないと勝負にならない。負けると思って来る奴はいない。しっかり対応して上回る試合をしていきたい」と受けて立った。

