
阪神痛恨のバッテリーサインミスはなぜ起きたのか…絶対的セットアッパー石井不在の穴を緊急昇格させたビーズリーで埋めることができず今季初のサヨナラ負け…3連敗で首位陥落
阪神が4月30日、バンテリンドームでの中日戦で延長11回に4-5で今季初のサヨナラ負けを喫して3連敗、巨人と入れ替わりで首位から陥落した。体調不良で登録抹消された石井大智(27)に代わって昇格したジェレミー・ビーズリー(29)が11回にバッテリーミスなども重なり一死一、三塁のピンチを招いて代打のオルランド・カリステ(33)にサヨナラ中犠飛を浴びた。先発の門別啓人(20)の交代機にベストの手札を切れないなど、絶対的セットアッパーの不在が響いた。
2点のリードを守れずに逆転負け
防御率0.75、11試合8ホールドの“絶対的セットアッパー”石井の不在が重くのしかかった。
4-4で迎えた延長11回。藤川監督は石井と交代で緊急昇格させたビーズリーをバンテリンのマウンドに送った。先頭の細川にセンターへゴロで抜けるヒットを許す。続く“ピンチバンター”の加藤に送りバントを決められて一死二塁で木下を迎えた初球にまさかのミスが起きる。外角ストレートに坂本のミットがついていけず土手部分に当ててボールが股間を抜けていったのだ。細川は難なく三塁へ進んだ。
おそらくサインミス。坂本は変化球のサインを出したが、投球は152キロのストレートで捕球の準備が追いつかなかったと考えらえる。
ビーズリーは2024年9月20日DeNA戦(横浜)以来の救援。今季初の救援登板で、昨年は、その1試合にしか救援登板経験はないが、2023年には12試合に救援登板しており、何もこういう起用に慣れていないわけではない。だが、現役時代にタイトル経験のある評論家の一人は、「石井の登録抹消に伴う、あまりにも急な昇格で、バッテリーとのサイン確認などのコミュニケーションがうまくできていなかったのでは?チームのドタバタがもろに出た。厳しい言い方だが、いろんな意味で準備を怠っていた」と推測、指摘した。
一死三塁のサヨナラ機に阪神ベンチはそのまま木下と勝負したが、カウントが3-0となった時点で申告敬遠で歩かせた。中日ベンチは井上監督が「どこか延長に入ったチャンスで出したいなというとっておきの代打」というカリステをロドリゲスに代えて打席に送ってきた。カウント2-2からの5球目。154キロの甘いストレートをセンターへライナーで打ち返された。前を守っていた近本が、数歩下がって捕球せねばならない位置まで飛んでのサヨナラ犠飛。手痛い3連敗を喫した。
石井不在の影響が出たのはここだけではない。
6回に阪神ベンチの継投策にも狂いが生じた。1点を追う6回に阪神は足がつって打席の途中で緊急降板することになった中日のドタバタにつけこみ、佐藤、前川のタイムリーなどで4-2とゲームをひっくり返した。だが、その裏、5回を2失点と踏ん張っていた門別が、板山、上林と連続三振で二死を取ってから突如、ボスラーに死球、中田に四球を与えて崩れたのだ。細川を迎えたところで藤川監督は岡留への交代を告げた。
岡留は細川を警戒するあまり四球を与えてしまう。スポーツ各紙の報道によると、試合後、藤川監督は、「我慢強く、攻めていく試合を選手たちに求めたい」とコメントしているが、この四球を示唆していたのだろう。
中日ベンチの代打高橋周平の動きを見た藤川監督は、二死満塁から島本にスイッチしたが、同点の2点タイムリーをライトへ運ばれた。カウント0-1からのシュートだった。
実は、4月23日の横浜DeNA戦でも似たケースがあった。「乗り越えなければならない」と、藤川監督は6回にも門別を続投させたが、2人の走者を出してしまい、途中交代となった。この時、藤川監督は一死一、三塁で牧の打席でまず勝利方程式の一人である桐敷からカードを切った。結果、2-2となる同点タイムリーを浴びるのだが、牧は左投手を苦手としておりベンチの継投策はこれがベストだった。だが、石井不在の中、藤川監督は、変則の岡留で細川を仕留めにいかざるを得なかった。