
RIZIN「男祭り」朝倉未来の復活劇はRフェザー級新王者が批判したように本当に「つまらなかった」のか…鈴木千裕の長所を消す戦略的なスタイルでドクターストップに追い込むTKO勝利
総合格闘技イベントRIZIN「男祭り」が4日、東京ドームで行われ、朝倉未来(32、JTT)が鈴木千裕(25、クロスポイント吉祥寺)を3ラウンド1分56秒ドクターストップによるTKO勝利で下して2023年4月の牛久絢太郎戦以来、約2年ぶりの勝利を飾った。一方メインでクレベル・コイケ(35、ブラジル)を1ラウンド62秒に衝撃のTKOで粉砕してRIZINフェザー級王座を奪ったラジャブアリ・シェイドゥラエフ(24、キルギス)は「つまらない試合だった」と酷評した。朝倉はベルト奪還にフォーカスしていることを明かし新王者との対戦を受けて立つ考えを示した。

テイクダウンからの寝技のラウンドを支配
泣いた。
鈴木の左目上の流血が激しく、ドクターストップによる試合続行不能をレフェリーが示した瞬間に、“路上の伝説”は、コーナーに駆け上がり両手を広げた。その目には確かに涙が浮かんでいた。
チケットが完売、4万2706人のファンで埋まった東京ドームが大歓声で揺れる。
昨年7月の超RIZIN.3で平本蓮(剛毅會)に秒殺され、一度は引退を口にした朝倉未来が、東京ドームで高らかに復活を遂げたのだ。ウガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)、YA-MAN(TARGET SHIBUYA)、平本と3連敗を喫していた朝倉にとって実に2年ぶりの勝利の味。
マイクを握った朝倉は「強くなって帰ってきました」と静かな声で報告し、「本当に東京ドームのこの景色で復活ができてうれしいです。良くない時もずっと応援してくれてありがとうございます。またすぐ戻ってきます。朝倉未来は最強じゃないといけないんで」とだけ短くカッコよく言い放った。
「とにかく泥臭くても、絶対に勝つ、と言っていたんで、ほっとした」
インタビュールーム。
試合後に縫ったという朝倉の唇からはまだ血がにじんでいた。
朝倉は鈴木の長所を消すファイトに徹した。
1ラウンドの立ち上がりこそ、左ストレート、左のハイキックと、鈴木の打撃戦に応じる構えを見せたが、すぐさまダブルレッグのタックルからテイクダウンを奪うと、コーナーに押し込んだ。トップポジションをキープしながら、時折、上体を起こしてパウンド、肘を打ち込んでいく。鈴木は、朝倉の頭をつかんでの決死のフルガード。防戦一方で体力を消耗していく。第2ラウンドもほぼ同じ展開。朝倉は、またテイクダウンを奪い、上に乗ってコーナーに鈴木を塩漬けにした。鈴木は蹴り上げで対抗しようとするが、その対策も万全で、鈴木の“凶器”である殴り合いの時間を作らせなかった。
「もっと違う作戦だったが、自分のテイクダウン能力が思っていたよりも上がっていた」
練習拠点のJTTにはテイクダウンディフェンスに長けたファイターが多かったため、自然、テイクダウン能力が進化していたという。
ただそのトップポジションからフィニッシュには持ち込めなかった。いや鈴木がそうさせなかったのである。
大劣勢の鈴木が3ラウンドに勝負にきた。
一発逆転を狙い豪快に左右フックを振り回して前に出た。
「ブンブン振り回してきたので危ない。こっちも必死。想定内だが、体感するとパンチが見えにくい。大振りの中にノーモーションみたいなのも入っていてそっちを気にしていると外側から来る。でもだいぶ見えていた」とは朝倉の回想。
だが、1、2ラウンドと、計6分間以上にわたる寝技で、スタミナを削られた鈴木のパンチは、精度と威力に欠けていた。
おそらくだが鈴木の打撃を弱らせたのも朝倉の戦略だったのだろう。朝倉のカウンターの左フックと左ストレートが続けさまにヒット。鈴木の左目上を切り裂いた。朝倉は、再び組みつき、テイクダウンでグラウンドに展開に持ち込んだが、鈴木の流血で返り血を浴びて真っ赤に染まった。レフェリーが試合を止めドクターチェックを依頼。傷口を診たドクターが続行不能と判断した。