
本人が現役続行明言も「井岡一翔は引退を考えるべき」と一部米メディアが厳しい指摘…一方で「年間最優秀試合候補」の評価と“疑惑採点”へのSNS批判も紹介
プロボクシングのWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが11日、東京の大田区総合体育館で行われ、挑戦者の井岡一翔(36、志成)が王者のフェルナンド・マルティネス(33、アルゼンチン)に0ー3判定で屈してリベンジを果たすことができなかった。井岡は10回に左フックでダウンを奪うも詰め切れなかったが、米老舗専門雑誌「ザ・リング」など、複数の米メディアが「年間最優秀試合候補」と称賛。また110ー117の大差をつけたジャッジに米SNSで批判の声があがったことも紹介された。井岡は、試合後に引退を否定したが「引退を考えるべきだ」との厳しい意見もあり、マルティネスとの3度目の再戦については「無意味だ」「ファンは見たがる」と意見が分かれた。
「井岡はマルティネスより弱いパンチでカウンターを重視しすぎた」
リングアナウンサーが「114-113」「115-112」「117-110」と3人のジャッジペーパーを先に読み上げ「スティル(防衛)」とコールした瞬間に王者のマルティネス陣営は声を出して飛び上がり、井岡は力なくうなだれた。昨年7月7日に0-3判定でマルティネスに屈した井岡は、大晦日の王者のインフルエンザ罹患による前日のドタキャンを経て再戦のリングに立ったがリベンジはならなかった。
「結果がすべてなんで負けたことが素直に悔しい。期待してくれている方、応援してくれている方の期待に応えらなかったので素直に悔しい。あの一瞬、一瞬で全力は出した。勝てれば良かったが全力を出してやり切ったことは良かった」
敗戦を正面から受け止めたが、こうも言った。
「この相手に勝てないなとはまったく思わない。勝てる相手だと思う。でも判定は離れているし不思議な感じ」とも言った。
井岡は前回とスタイルを変え、ステップバックを使い、マルティネスが得意とする至近距離での打ち合いの時間を作らせず、一進一退の攻防を演じ、10ラウンドには、左フックのカウンターでダウンを奪った。だが、詰め切れず、結果的に井岡の勝利を支持するジャッジは1人もいなかった。
ただダウンを奪った10ラウンドと、11ラウンド以外のすべてをマルティネスの「10-9」とした米国人ロバート・ホイル氏の「110-117」の採点は、疑問がつくもので、米専門サイトの「ボクシングニュース24」は「マルティネスが再戦で井岡を倒すが、大差での判定がソーシャルメディアに火をつける」との見出しを取り、SNSで批判の声があがったことを伝えた。
「117-110のスコアについて、試合がもっと拮抗していたという考えから、差が付き過ぎていると感じたボクシングファンたちからの多くの批判の声がSNSであがった。あるファンたちはこれをカイル氏による“偏見の兆候”と見ていた」
ただ「ホイル氏は、マルティネスの止まることのないアグレッシブさ、激しさ、そして毎回多く放っていたパンチが違いになったと感じていたようだ。マルティネスが常に大きなパンチをヒットさせていたことを無視することは難しい。井岡は(マルティネスより)弱いパンチでカウンターを重視し過ぎ、必要とされた攻撃の形を見せなかった」とも続けた。
この試合を「年間最優秀試合候補」と報じたのが「リング誌」と「ボクシングニュース24/7」だ。
1ラウンドから12ラウンドまで2人がハイレベルの激闘を演じたことを評価した。
「リング誌」は、「“プーマ”・マルティネスが長く待たされた再戦で、彼が持つタイトルを保持するためダウンを喫しても生き抜いた」と伝えた。
「(1度目の戦いから)10カ月が経ち、ついに両者はとことん2度目を戦い抜く準備ができた。(最終ラウンドの)残り40秒で、2人の戦士は、互いを真剣に見合うとマルティネスがうなずき、続いて起きたすべてを出しきった打撃戦は、また新たな2025年の最優秀試合候補として確かに記憶されるものだった。スコアカードを待つ間は緊迫したが、勝者としてリングを降りたのはマルティネスだった。取り乱した井岡は、リングを去る際に涙を見せたが、猛烈で過酷だった24ラウンドに見せた努力を称えて相手の手を取ってあげた」と記した。