トップ下で起用された鎌田大地が先制ゴールを決める。一度はオフサイド判定もVARで認定(写真:なかしまだいすけ/アフロ)
トップ下で起用された鎌田大地が先制ゴールを決める。一度はオフサイド判定もVARで認定(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

米国撃破の森保Jはなぜ「鎌田大地のチーム」に変貌を遂げたのか

 カタールワールドカップを控える日本代表が23日、ドイツ・デュッセルドルフで行われた国際親善試合でアメリカ代表に2-0で快勝した。システムをアジア最終予選中の4-3-3から4-2-3-1に戻した日本は、前半25分にトップ下の鎌田大地(26、アイントラハト・フランフルト)が、後半43分には途中出場のMF三笘薫(25、ブライトン)がゴール。本番をにらんだ布陣で、1年前は心身ともにどん底にいた鎌田が完全復調を果たした理由に迫った。

「場所はどこでも、日本代表でのゴールは格別」

 宙を舞っている間に体を反転させ、右手で作ったガッツポーズとともにデュッセルドルフ・アレーナのピッチに着地した鎌田の表情から笑顔が消えた。ちょっぴり不満そうに唇をとがらせ、両手を腰にあてながら1分あまりの時間がすぎただろうか。

 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のチェックを待っていた、ドイツ人のフェリックス・ツヴァイヤー主審が長目の笛を吹いた。続けて右手でセンターサークル付近を指さしたシグナルとともに、鎌田の先制ゴールが正式に認められた。

 チームメイトたちの祝福に今度は苦笑いを浮かべた鎌田は、試合後のフラッシュインタビューで「場所はどこでも、日本代表でのゴールは格別」と出場20試合目での通算6ゴール目を素直に喜びながら、反省点をあげることも忘れなかった。

「今日は僕自身、得点チャンスが多かったので1点を決められてよかったけど、もう少し早めに2点目を取れていたらチームはもっと楽になっていた。点を取れたのはよかったけど、もう少しシュートを決められるようにならないと」

 両チームともに無得点の均衡が破れた、と思われたのは前半24分だった。 アメリカのパスミスに素早く反応したMF伊東純也(29、スタッド・ランス)がボールを拾い、そのままドリブルに入って加速していく。ペナルティーエリア直前で相手選手に止められたが、フォローしてきたボランチ守田英正(27、スポルティング)がこぼれ球を収め、左サイドでノーマークになっていた鎌田へパスを通した。

 トップ下で先発出場を果たしていた鎌田が、ワンタッチで右足のインサイドを合わせる。右へダイブしたアメリカの守護神マット・ターナー(28、アーセナル)が必死に伸ばした左手の先を、カーブの軌道を描かせた一撃がすり抜けていった。

 直後からアメリカの選手たちがオフサイドをアピール。副審も旗を上げ、ツヴァイヤー主審も耳に手を当てるシグナルを見せた。しかし、同主審がオン・フィールド・レビューを行うまでもなく、VARの確認だけで1分後の25分にオフサイドが取り消された。

 1年前の鎌田は心身ともにどん底の状態にあえいでいた。

「シーズンが始まってから、自分的には移籍の問題など頭の部分ですごく混乱があって。所属チームでのパフォーマンスもよくない流れのまま代表、とうい感じでした」

 鎌田がこんな言葉を残したのは昨年10月。サウジアラビア代表とのアジア最終予選第3戦を控えて、敵地ジッダから臨んだオンライン取材中だった。  2020-21シーズンに公式戦で10ゴールをマークした鎌田は、フランクフルトからのステップアップを考えていた。新天地候補がいくつかあがるも、何も決まらないまま夏の移籍市場が終了。モチベーションが萎えた状態で昨シーズンを迎えた。

 メンタルに比例するように、鎌田のフィジカルコンディションもなかなか上がらない。迎えた昨年9月2日。雨が降る市立吹田サッカースタジアムにオマーン代表を迎えたアジア最終予選の初戦で、森保ジャパンは0-1でまさかの黒星を喫した。

 4-2-3-1システムのトップ下で先発していた鎌田も精彩を欠き、後半25分に久保建英(21、レアル・ソシエダ)と交代。続く中国代表との第2戦ではトップ下の先発を久保に奪われ、自身は後半31分からの途中出場に甘んじた。

 約1ヵ月後のサウジアラビア戦。故障離脱した久保に代わって先発に戻った鎌田だったが、日本は再び0-1で苦杯をなめた。帰国後にオーストラリア代表を埼玉スタジアムに迎える、生きるか死ぬかの大一番。森保一監督が動いた。

 トップ下を置かない4-3-3システムへの変更。鎌田自身はインサイドハーフでもプレーできる自信があったが、最悪な流れを変えるために、森保監督はアンカー遠藤航(29、シュツットガルト)と組ませる中盤の顔ぶれも一変させた。

 

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