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森保監督はFW三笘薫の「チームとして決まり事を持たねば」の訴えに「彼自身が戦術だ」と返答した(資料写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
森保監督はFW三笘薫の「チームとして決まり事を持たねば」の訴えに「彼自身が戦術だ」と返答した(資料写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

なぜ森保監督は三笘が発信した「チームに約束事が必要」のSOSに「彼自身が戦術」と“禅問答”のような答えを返したのか?

 

日本代表の森保一監督(53)が21日にオンライン取材に応じ、FW三笘薫(25、ユニオン・サンジロワーズ)が発信した危機感に言及した。チュニジア代表に0-3で敗れた14日の強化マッチ後に、三笘は「どのように攻めるのか、という意識の共有とバリエーションが不足している」と攻撃面でチーム内の約束事がないと指摘。これに指揮官は「さらに独力でいける選手になってほしい」と求めるなど、考えが噛み合わない状況が浮き彫りになった。

「個で打開する能力がある選手であるからこそ託している」

 6月の強化マッチ4連戦を終えてから、森保監督が初めて臨んだオンライン取材対応。1時間あまりにおよんだ質疑応答で、当然ながら三笘に関する質問も飛んだ。

 チュニジアに0-3の完敗を喫した14日の国際親善試合。1点ビハインドの後半15分から投入された三笘は、再三にわたって左サイドから得意のドリブル突破を仕掛け、キックオフ前から雨が降り注いだパナソニックスタジアム吹田を沸かせた。

 しかし、ほとんどの場面で味方のサポートを得られない。ペナルティーエリア内では人数をかけて対応してきたチュニジアの前に、決定的な仕事をさせてもらえない。試合後のオンライン会見で、25歳のドリブラーはこんな言葉を残していた。

「チームとしてボールを持ったときに、どのように攻めるのか、という意識の共有とバリエーションが不足している。今日のような流れになって相手のカウンター攻撃を受けて、というのはワールドカップで絶対にあってはならないこと。チームとして決まり事のようなものを持たないといけないと思っています」

 単独で仕掛けても最後のクロスが味方に合わず、あるいはボールを失った次の瞬間にカウンターが待っている。相手のレベルが上がるほど、強引な攻めがリスクを高めると三笘が危機感を発信した過程で、森保ジャパンの現在地が明かされた。

 ロシア大会後の2018年9月に船出してから約3年9ヵ月。チュニジア戦まで52試合を戦ってきたチームに、特に攻撃面において約束事がない。カタールワールドカップへ向けたSOSでもある三笘の言葉を、実は指揮官もすでに共有していた。

「本人からもそういう話があったし、メディア上でもいろいろな話をしているので」

 6月シリーズを通じて浮かび上がった課題に関して、三笘と話し合いの場を持ったと明かした森保監督は、さらにこんな言葉を紡いだ。

「メッセージとしては、彼自体が戦術であるというところ。個で打開する能力がある選手であるからこそ託している。ブラジル戦以降は研究もされて、個の突破が難しいと本人も感じながらやっていると思うが、世界と戦っていく上で『薫が戦術なんだ』と」

 戦術と選手名を合わせた「戦術・○○」という言葉がある。戦い方を特定の選手の個人技に委ねる、もっと踏み込んで言えば丸投げする采配を揶揄したものだが、まさか森保監督自身から「戦術・三笘」を聞かされるとは思ってもいなかった。

 指揮官はさらにユニオン・サンジロワーズへの期限付き移籍を終え、満を持して所属元のブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンへ復帰し、8月第1週に開幕する新シーズンからプレミアリーグの舞台で戦う三笘へ、期待を込めてエールを送った。

「これから世界のトップ・トップで、プレミアリーグで戦っていくときに、誰の助けがなくても自分は突破できるという武器に、ここ(日本代表)で少しでも自信を持ってもらうことが所属チームでの成功につながっていくし、それが日本代表の武器としての成長につながるという見方のなかでプレーしてもらっている」

 

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