• HOME
  • 記事
  • 野球
  • 「代打の神様という言葉は死語に」里崎智也氏が指摘するDH制導入で起きる“常識のウソ”…2027年からのセ・リーグ採用で野球はどう変わるのか?

「代打の神様という言葉は死語に」里崎智也氏が指摘するDH制導入で起きる“常識のウソ”…2027年からのセ・リーグ採用で野球はどう変わるのか?

 セ・リーグが2027年シーズンから指名打者(DH)制度を導入することを4日の理事会で全会一致で電撃決定した。1975年からパ・リーグが採用したもののセは9人野球の伝統を守り続けてきたが、国内の高校、大学野球が相次いでDH制導入を発表するなどしたことや、セパの格差解消のために方針を転換した。DH導入でセの野球はどう変わるのか。元ロッテで捕手としてWBCなどでも活躍した“モノ言う”評論家の里崎智也氏(49)に意見を聞いた。

 来春から高校野球と東京六大学もDH制度を導入

 ついにセが守り続けた伝統の“封印”を解いた。2022年にメジャーリーグでも「9人野球」を貫いてきたナ・リーグがDHを導入。国内では高校野球、東京六大学野球、関西学生野球も来春からの導入を決め、その時代の流れの中で、プロ野球のセの動向が注目されていた。
 セのDH導入は2016年頃から検討されていた。当時は巨人と阪神が主導した。よりエンターテイメント性を高め、ファンの関心を集めたいとの狙いがあった。
 2019年の日本シリーズで巨人がソフトバンクに4連敗。当時の原辰徳監督が、セパの“格差”に「DH制は使うべきだろうね」と発言し、再びセのDH導入論争に火をつけた。新型コロナ禍の影響もあり、2020年の日本シリーズでは全試合にDH制度が採用され、巨人は投手の負担軽減などを理由にペナントレースでも暫定的な導入することを理事会で提言したが、賛同を得られず議論は停滞。
 2023年の監督会議では、フリートークの中で、オリックスの監督としてDHの野球を経験している阪神監督の岡田彰布氏が「オレはずっとDH反対。打順をシャッフルしたり、ピッチャーが回ってくるとか回ってこないとか、そういう醍醐味がちょっとない」と反対意見を述べるなどしていた。
 だが、セ以上に「9人野球」にこだわっていた歴史のある東京六大学が方針を転換し、野球人口の減少を食い止める意味もあり、高校野球がDH導入を決断したことで、一気に潮目が変わった。元々WBCや五輪などでもDHが採用されていて、国際化にも乗り遅れていた。ただDH導入となると、ドラフトの戦略など補強に関する準備が変わってくるため採用は、来年ではなく2027年からとなった。
 SNSなどでは早くも賛否が飛び交っているが、里崎氏は「機構が決めること。いいも悪いもないですよ。デメリットもメリットもあります。ただどの球団も同時にスタートするのだから、戦力補強の対応、準備を理由に1年導入を待つ理由はよくわからない」という意見。そして「DHを導入することの効果については間違った見解が広がっている」とも主張した。
 里崎氏が考えるメリットとしては、野球がダイナミックになる部分だ。
「現状のセの野球では、下位打線で機動力を使うことはほぼない。どういった選手起用をするかにもよりますが、投手が打席に立たないことで、下位打線でも機動力を使えて、得点能力が上がり、野球が常に動く可能性がある」
 また投手交代の妙が減るとのネガティブ意見に関しても里崎氏は否定的だ。
「DHが無いと投手の交代機が難しく、采配の妙があるとも言われていますが、DHの方がむしろ投手交代は難しいですからね。打線の巡りで投手の打席に代打を送る自動的な投手交代がないので、本当の交代機を見極めるベンチの能力が試されるんです。実はDHのある野球の方が交代機は難しいんです」
 一方でDH効果とされる“常識のウソ”をこう指摘した。
「守れない選手やベテランに出場機会が生まれるという議論がありますが、今季のパで、そういう選手が何人いますか?ソフトバンクの近藤は怪我もありDHで起用されていますが、外野は守れる選手。オリックスの杉本もDHがなくとも守れます。日ハムのレイエスや楽天の外国人選手らがDHの恩恵は得ていますが、DHがあれば、選手の出場可能性が増える、パワーバッターが育つという考え方はちょっと違うんじゃないですか」

 

関連記事一覧