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広陵の堀正和校長が大会途中の辞退を発表して謝罪した(写真・スポーツ報知/アフロ)
広陵の堀正和校長が大会途中の辞退を発表して謝罪した(写真・スポーツ報知/アフロ)

「判断が遅い」広陵の甲子園途中辞退を招いた原因は?SNS時代に乗り遅れた高野連の3月処分「公表せず」の対応と学校のイジメ問題への“認識の甘さ”

 第107回全国高校野球選手権大会に出場していた広陵(広島)が10日、14日に予定されていた津田学園(三重)との2回戦以降の出場を辞退すると発表した。同校が9日に理事会を開いて決定、大会本部に報告、了承を得た上で堀正和校長が会見を開き発表した。SNSでは「判断が遅い」がトレンドワード入りするなど賛否の声が渦巻いた。異例の悲劇の背景に何があったのか。

 SNSで告発され学校の公表した別の事案の影響が決め手のひとつ

 水面下で事態は進んでいた。広陵は、9日に同校の副校長で理事でもある中井哲之監督を除く4人の理事を招集して理事会を開き、14日に控えた2回戦の津田学園(三重)以降の出場の辞退を決定した。ただちに中井監督の長男である部長を通じて部員に伝達された。学校は大会本部に報告、了承を得た上で、チームは午前9時半にバスで広島へ帰郷。堀校長が10日に会見を開いた。
 各社が報道した堀校長の会見、リリースによると、同校は1月に発生した暴力事案で日本高野連から厳重注意処分を受けていたが、SNSでの実名告発で、別の事案があり、第三者委員会が調査中であることが明らかになった。監督、コーチの暴行、暴言がSNSで拡散されたことで「事態を重く受け止めた」という。
 収まらぬSNSの騒動が、大会運営に支障をきたし、誹謗中傷だけなく、爆破予告までされるに至ったことで「生徒、保護者を守る義務がある」と出場辞退を決めた。
 SNSでは「判断が遅い」がトレンドワードとなった。
 今回の悲劇を生んだ背景のひとつが高野連の対応の不味さだろう。
 報道によると高野連の宝馨会長は「暴力事件が発生してしまう土壌をなくしていかないといけない。学校のガバナンスをうまくいくように進めていかないといけないし、学校として一つのケジメとして辞退を選ばれたと思っている」と発言したそうだが、これもSNSでは「まるで他人事だけど、ここまで騒ぎが大きくなったのは、高野連の責任」との意見が多く見られた。
 高野連は、広陵から暴力事案の報告を受けて3月に審議会を経て厳重注意処分を下したが公表をしなかった。日本学生野球憲章では「注意・厳重注意」に関しては、未成年者、個人の保護の観点で公表しないとの規則があり、それに沿って伏せた。 
 広陵も高野連の方針に沿い発表はしなかった。
 だが、SNS全盛の時代にあって「個人の保護」は難しい。今回もSNSで告発された。事案を隠すことなどできないのだ。秘匿したことが、SNSの炎上を加速させた。高野連の規約、組織、対応が時代に追いついていないのだ。
 令和5年に起きた別の事案に関しても、高野連は把握していたが、公表はしなかった。今年の6月に第三者員会が設置されて調査中。そこまで2度の学内調査では「指摘された事項は確認できませんでした」との結論が出ているが、被害者生徒は納得がいかずに高野連に訴え、警察署に被害届まで出して、結局、第三者委員会を設置するに至った。つまりグレーの状態のままのチームの県大会出場を高野連が認めていたのだ。これも大問題だろう。

 

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