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WBOアジアパシフィックスーパーフライ級王座に挑んだ白石聖が脱水症状で救急搬送(写真・山口裕朗)
WBOアジアパシフィックスーパーフライ級王座に挑んだ白石聖が脱水症状で救急搬送(写真・山口裕朗)

井岡一翔も後輩を心配…リング事故を受けて厳戒体制の後楽園で12回戦から10回戦に短縮されたWBO地域王座戦で敗れた白石聖が脱水症で救急搬送されて緊急入院…大事には至らなかったが…

 プロボクシングの「ダイヤモンドグローブ」が12日、後楽園ホールで行われ、2人のボクサーが亡くなったリング禍を受けてメインのWBOアジアパシフィックスーパーフライ級タイトルマッチは12回戦から10回戦に短縮して開催されたが、挑戦者の白石聖(28、志成)が試合後に発熱と痙攣などの症状を訴える脱水症で都内の病院に救急搬送される事態が起きた。白石は血液検査の結果、肝臓の数値に異常が見られたため緊急入院となった。白石は、王者の川浦龍生(31、三迫)の左のカウンターを何発もクリーンヒットされ、終盤での接近戦に活路を見出したが0-3判定で敗れていた。またスーパーフライ級8回戦では、宝珠山晃(29、三迫)のバッティングによる負傷で引き分けとなったが、事故の教訓からか早めのストップ判断が下されていた。

 0ー3判定負け後の控室で起きた異変

 また後楽園ホールの控室フロアに緊張が走った。
 2日の興行でOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王座に挑んだ神足茂利さんと、日本ライト級挑戦者決定戦に臨んだ浦川大将さんが、試合後に救急搬送され、開頭手術を受け、その後、相次いで亡くなる悲劇が起きた。日本ボクシング界を揺るがすリング事故後、最初の後楽園での興行。パンフレットの表記修正が間に合わず、メインのWBOアジアパシフィックスーパーフライ級タイトルマッチの前には、リングアナが、「選手の健康管理のため12回戦が10回戦に変更となりました」と、わざわざ告知する異例のスタートとなったのだが、その試合後に救急車両が手配される事態が起きたのだ。
 異変が起きたのは、負けた白石のコミッションドクターの検診が終わり控室へ戻ってからだ。白石は、応援にかけつけた元4階級制覇王者の井岡一翔と、試合を振り返り、反省点について話をしていたが、突如、異常を訴えてベッドに横になった。
「体が熱くて、痙攣も…」。
 熱中症などに詳しい野木丈司トレーナーが「脱水症を起こしているかも」と、氷で脇の下やクビの周りを冷やして、冷たいタオルで全身を覆う応急措置を施したが、症状がおさまらず医務室に自力で移動して救急車両が呼ばれた。グタっとした様子で車イスで救急車まで移動した白石は都内の病院に救急搬送された。同行した藤原俊志トレーナーによると、点滴を打ち、本人は「楽になった」と、語ったそうだが、血液検査で肝臓の数値が悪かったため緊急入院。今後、数値が回復するまで入院が続く可能性があるという。
 井岡も自分に憧れて井岡ジムから志成ジムへ移籍してきた後輩の様子を心配していた。
 試合はフルラウンドにもつれこんだ。
 終盤には激しい打撃戦となり、ポイントで負けていた白石が逆襲、ボデイ攻撃とスタミナ切れの重なった川浦がクリンチに逃げる展開になったが、白石も体力を使い果たしていた。加えて、かなりの水抜き減量で計量をクリアしており、その影響もあったのかもしれない。
 白石陣営はステップワークで川浦の武器である左を外して、その打ち終わりを狙っていく作戦を立てていた。だが、減量の影響からか足が動かなった。仕方なく足を止めた駆け引きを余儀なくされ、「的中率を上げる」トレーニングを積んできた川浦に的確なクリーンヒットを打たれた。川浦の手数は少なかったが、左の有効打で確実にポイントを稼いでいた。
 12回戦が10回戦に変わり「序盤からポイントを奪いにいく」との作戦変更もあったという。
 一方の白石陣営は、「川浦はインファイトに弱い」と狙いをつけていた。6、7ラウンドにコーナーにつめての接近戦を仕掛け、ボディ攻撃で反撃のきっかけをつかみかけ、8ラウンドの終わりには、後ろの観客席にいた井岡が、わざわざコーナーまで駆けつけて「ジョー!殴り合え!打ち合っていいぞ!」と本来は、至近距離での打撃戦が得意ではない後輩にアドバイスを送った。
 だが、白石の体は動いていなかった。事故を受け「ラウンド数が長くなるほど危険度が増す」とJBCが、関係各所に働きかけて、12回戦が10回戦に短縮されて行われたが、もし12回戦であれば、白石が試合中に脱水症で体調を悪くした可能性もある。その際にパンチを被弾していた危険性を考えると10回戦に短縮した対策の効果があったのかもしれない。

 

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