
優勝した沖縄尚学と日大三の“差”はどこにあったのか…「狙い球の絞り方に疑問」ノムさん“参謀”が戦術から分析した夏の甲子園決勝
第107回全国高校野球選手権の決勝が23日、甲子園で行われ、沖縄尚学が日大三を3-1で下して初優勝を果たした。試合は1-1の展開で進んだが沖縄尚学は6回に4番の宜野座恵夢(3年)のタイムリーで勝ち越すと8回にも追加点を奪い、守っては先発の新垣有絃(2年)が8回二死まで1失点に抑え、プロ注目の左腕、末吉良丞(2年)が締めて逃げ切った。なぜ沖縄尚学は勝てたのか。戦術面から振り返ってみた。
新垣ー末吉の2年生コンビで守り勝つ
最後にピンチを迎えた。マウンドには8回二死から救援登板した背番号1のサウスポー末吉。プロのスカウトがマークしているスーパー2年生である。末吉は、ここまで5試合で32回2/3、512球を投げてきた疲労の影響か、スピードは出ていなかった。9回一死から四球を与え、桜井春輝の投手ゴロを取り損ね。あわてて一塁へ投げた送球が悪送球となった。
一死一、三塁。長打が出れば同点である。
比嘉公也監督は田淵颯志郎を伝令に走らせた。
「切り替えて投げ急ぐことがないように」
代打の永野翔成が初球を捉えた強烈なゴロはショートの正面。真喜志は、冷静に打球を前へ落として二塁へ転送し、ダブルプレーでのゲームセット。左手の人差し指を甲子園の空へ突き出した末吉を中心に勝利の輪ができて、ナインが同じように1番を示す手を揃えて、ぴょんぴょん跳びはねた。
一方の日大三ナインは涙にくれた。
ノーヒットに終わった2年生4番の田中諒は、アルプスの応援団への挨拶がおわると、その場でひざまづき、芝生に顔を伏せて号泣した。
恒例の優勝インタビュー。キャプテンの真喜志は「良い仲間と最高の舞台でプレーできて、感謝したいです。相手があってこその自分たち。相手にも感謝したいです」とすがすがしいスピーチ。
インタビュアーから23日が母の誕生日であることを伝えられると、いままで甲子園で優勝できる自分にまで育ててくれてありがとうと伝えたいです」と返して、感動を呼んだ。スタンドでは女手ひとつで育ててきた母がタオルで顔をおさえて泣いていた。決勝点を含む2本のタイムリーを放った4番の宜野座も「あの場面で打てたことが一番うれしい。なかなか調子を出せない苦しい時期もあったが、この夏に優勝できてうれしい」と緊張した面持ちで話した。
沖縄尚学と日大三の差はどこにあったのか。
元ヤクルト編成部長で故・野村克也氏の参謀としてヤクルト、阪神でコーチを務めた松井優典氏は、「最後の併殺場面に象徴される。沖縄尚学は堅い守りで、バッテリーを軸にした野球で守り勝った。その背景には、プロ野球のキャンプ地であり、小さい頃から自然と野球に親しみ、周りが上手いから、自分も上手くなるという野球王国沖縄という風土があったと思う」と指摘した。
沖縄尚学は県大会では無失策。甲子園では準々決勝まで失策は一つで準決勝は4失策と崩れたが、決勝では堅守を貫いた。