
9位入賞の角田裕毅の残留か、3位表彰台のハジャー昇格か…来季レッドブルのシートを巡りマルコ氏とメキース氏が意見対立?!
レッドブルの来季のセカンドドライバーを巡ってモータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ氏(82、オーストリア)が注目発言を行った。オランダGPで8戦ぶりとなる9位入賞を果たした角田裕毅(25)ではなく3位で表彰台に上がる快挙を演じたレーシングブルズのアイザック・ハジャー(20、フランス)を称賛したのだ。だが、一方でレッドブルの代表を務めるローラン・メキース氏(48、フランス)は角田の“逆襲への一歩”を評価した。角田の去就決定のデッドラインもマルコ氏が「9月か10月」と明かしたのに対してメキース氏は「急がない」と異なる見解を示した。レッドブル内でも来季エースのマックス・フェルスタッペン(27、オランダ)のパートナーを誰にするかの意見が分かれているようだが、角田の残留か、ハジャーの昇格かの”サバイバルレース”の行方に注目が集まる。
「セカンドドライバーの重圧に強靱な精神力を持つハジャーなら耐えられる」
レッドブルの重鎮が驚異のルーキーを称賛した。
8月31日に行われた今季第15戦となるオランダGP決勝で、3番手でチェッカーを受けた20歳のハジャーがF1史上で5番目の若さで表彰台に立った。レーシングブルズのドライバーとしても、2021年のアゼルバイジャンGPで3番手に食い込んだピエール・ガスリー(29、フランス)に並ぶ快挙を達成した。
しかもハジャーは、同29日のフリー走行2回目(FP2)でマシンの一部センサーが機能しないトラブルが発生。タイムなしに終わると、翌30日の同3回目(FP3)でもバッテリー故障に見舞われて9番手のラップタイムに甘んじている。
レッドブルの重鎮で、長くモータースポーツアドバイザーを務めるマルコ氏は英国のF1専門メディア『F1 OVERSTEER』で、フリー走行で十分に周回を重ねられなくても公式予選で自己最高位となる4番グリッドを獲得し、決勝ではさらに順位をひとつ上げてフィニッシュしたハジャーの有言実行ぶりをこう称賛した。
「公式予選を前にして、ハジャーは『自分のスピードには自信がある。トップ5には入るだろう』と約束してくれた。4番手でも大きな成果だったが、表彰台に立った姿には本当に驚かされた。彼はすべての問題を黙って片づける。常にポジティブで、絶対にマシンのせいにはしないし、何らかのミスを犯せば素直に『申し訳ない』と謝ってくる。非常に野心的で、正直で、何よりもコース上で速さを持つ若者だ」
マシンのせいにはしない、という部分からは角田への皮肉が伝わってくる。グリップ不足をはじめとするマシンの不具合や、担当レースエンジニアのリチャード・ウッド氏への不満を角田は忌憚なくメディアに対して語ってきた。
オランダGPを前にマルコ氏は「そんなにマックス(フェルスタッペンとの)マシンに違いがあるとは知らなかった」とも発言していたが、これも結果を残せていない角田への皮肉だったのかもしれない。
2021年6月に当時16歳のハジャーをレッドブル・ジュニアチームに加入させた際に、マルコ氏は通算4度の年間王者に輝き、国際モータースポーツ殿堂入りも果たしているF1界のレジェンドの名前をあげながら「彼は第2のアラン・プロストだ」と紹介している。
「第2のプロストだと紹介した私の言葉を、メディアを含めた大勢の人々は笑い飛ばしていた。私たちがハジャーを選んだのは、彼が特別な能力を持っているのがわかっていたからだ。そしていま、彼はそれを鮮やかに証明してくれた」
それほどマルコ氏はハジャーを評価していた。
角田はオランダGPで12番手グリッドからスタートして8戦ぶりの入賞となる9位に入り、後半戦の逆襲へのスタートを切った。角田はサマーブレイク期間中にレッドブル陣営と、来季の去就について協議の場を持ち、残りレースの結果と内容を見て残留か退団かを決めることで合意に達した。その注目の期限についてマルコ氏は「9月か10月」と明かしていた。 つまり今回のオランダGPを含めて9月のイタリア、アゼルバイジャン、10月のシンガポールとアメリカ、メキシコの6レースが角田の去就を決める”最終査定レース”。その第1戦で角田は上昇気配を示したが、ハジャーはそれを上回る結果を残した。