
え?珍しい!「3度目の打ち直し本塁打なんて見たことがない」中日涌井がオスナに大ファウル2本後に決勝満塁弾許す…ベンチが見落とした危険なサイン「CS進出はかなり厳しい」
阪神の優勝でファンの注目がセ・リーグのCS出場権争いに変わる中で、4位の中日が11日、神宮でのヤクルト戦に5-6で逆転負けを喫して、3位の横浜DeNAが阪神に0-2で敗れたものの「4.5」のゲーム差を縮めることができなかった。中日の先発、涌井秀章(39)は5回に3四死球と制球を乱してホセ・オスナ(32)に決勝の13号満塁弾を許しての5敗目。あわや本塁打の大ファウルを2本打たれた後の珍しい3度目の打ち直し本塁打だった。
雨の影響でマウンドが滑りコントロールできなくなる
3度目の打ち直し満塁弾なんて見たことがない。
超異例の失態で涌井が神宮のマウンドでKOされた。
2-1の1点リードで迎えた5回だ。一死から投手の吉村を四球で歩かせた。涌井は降り続いていた雨の影響でゆるくなったマウンドの足元をしきりに気にしていた。1番の濱田に三遊間ヒットでつながれ、二死となってから北村恵への2球目がスッポ抜けての死球。二死満塁となり、8月から17本塁打の無双状態の村上を迎えた。だが、4球目のスライダーが引っ掛かり、右足のつま先付近に当ててしまう。同点の押し出し死球である。もうゾーンでボールを制御できなくなっていた。
そしてオスナである。
ボールワンからインコースをついた2球目のストレートをライナーでレフトポールの左へ大ファウルされた。さらにカウント3-1からインコースをついた5球目のスライダーをまた高々と舞い上がるレフトポール際への大ファウル。雨の神宮に駆けつけた竜党が肝を冷やす。そして続く6球目だった。再度インコースを狙ったストレートが高めに浮き、打ち上げた大飛球は、今度は切れることなく細川の頭上を越えてレフトスタンドの前列へ舞い降りた。
勝負ありの決勝の13号グランドスラム。
「ファウルでいくつか打ち損じみたいになってしまったんですけど、最後にホームランで決められたので良かった」とオスナが言う。
「大ファウルの後の打ち直し」や、逆に「三振前の大ファウル」は、プロ野球“あるある”ではあるが、3度目の打ち直し本塁打は珍しい。
スポーツ各紙の報道によると、涌井はその1球の選択を「変化球で外へいくべきだった」と悔やんだ。井上監督は「ホームランだけはあかんぞというところで打たれた」と、その場面をゲームのポイントにあげた。
阪神、ダイエー、ヤクルトで先発、抑えで活躍した評論家の池田親興氏は「大ファウル2本の後の3度目の打ち直し本塁打って、僕が現役時代にも記憶がないし、ちょっと見たことがない」と苦言を呈した。
「そこは打ってもファウルという配球もあるが、やはり大ファウルの後には、バッテリーは慎重になるもの。同じようなコースに同じ球種を投げて打たれることに問題はある。ただ涌井にはこの回に明らかに異変が見られていた。ベンチはそこに気づいていたのか?」
池田氏が指摘するのは、ぬかるんだマウンドの影響だ。3回まで打者9人でテンポよく抑えていた涌井は、4回にもチェイビス、田中の連続エラーから、村上、オスナに連続四球を与えて、太田のタイムリーで1点を失い、制球に狂いが出始めていた。
「涌井もそこを反省していたようだが、一死からの吉村への四球がすべて。涌井は足元を神経質に気にしていた。今の硬いマウンドは、雨の影響でかなり滑る。年齢と共に動作に時間をかけるフォームに変わってきている涌井はバランスを崩してコントロールできなくなっていた。2つの死球がその最たるもの。ベンチはその危険を示すサインに気づいていたのか。オスナを迎えた場面は満塁で、しかも、ボールがコントロールできないという極度にストレスが溜まった状況が、ありえない3度目の打ち直し満塁弾というものにつながってしまったと思う」