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優勝の瞬間をベンチで待つロバーツ監督(写真:Imagn/ロイター/アフロ)
優勝の瞬間をベンチで待つロバーツ監督(写真:Imagn/ロイター/アフロ)

ロバーツ監督が西地区Vのシャンパンファイトを前に大谷翔平らド軍ナインに「これだけを望む」と伝えた厳命とは?

 ドジャースが25日(日本時間26日)、敵地でのダイヤモンドバックス戦に8-0で圧勝し4年連続23回目のナ・リーグ西地区の優勝を決めた。先発の山本由伸(27)が6回、94球を投げて4安打7奪三振無失点の好投で12勝目をマーク、大谷翔平(31)は4回一死三塁から4試合ぶりの54号ソロを放ち、山本を援護した。30日(日本時間10月1日)のワイルドカードシリーズからポストシーズンの戦いが始まるが、シャンパンファイトが始まる前に、デーブ・ロバーツ監督(53)は、「これだけを君たちに望む」と厳命を下した。そのメッセージとは?

 「あと5週間、鋭さを失うな」

 苦しみながら159試合目にしてドジャースが西地区の頂点に立った。マジック「1」で迎えたダイヤモンドバックス戦は、久しぶりに強いドジャースを象徴するようなゲームだった。
2回にフレディ・フリーマン、アンディ・パヘスの連続本塁打などで4点を先制すると、4回には一死三塁から大谷がナビル・クリスマットのおそらく、見送ればボールの132キロのチェンジアップを片手で拾いあげて右中間スタンドに放り込んだ。
「感触は良かった。外野フライを打てればいいと思っていたので、うまく拾えて良かった」
中継局のNHKは、試合後の大谷のコメントをこう伝えた。さらにフリーマンに2本目となる23号2ランが飛び出て8-0と大量リードを奪い、先発の山本が6回を無失点に抑える8-0の完勝で、追うパドレスを振り切った。
 グラウンド内でロバーツ監督はスポーツネットLAのインタビューを受けた。
「(この優勝には)非常に大きな意味がある。春季キャンプから始まり、ここまでたどり着くには多くの努力が必要だった。選手たちが戦い、耐え抜き、全員が責任を果たした。ただ誇りに思う。誰も言い訳をせず、数々の逆境を乗り越えて成長した。ここ数週間、言い続けてきたが、今は、自分たちの野球を実践できている」
 9月に入って泥沼の5連敗するなどチームは苦境に立たされた。救援陣の炎上が続き、救援防御率が5点台になる危機的状況。勝ちゲームを落とすリリーフ失敗は、実に13試合に及んだ。5回までノーノーを続行していた大谷を6回から代えて逆転され、9回二死までノーノーを続けていた山本が一発を浴びると、そこで交代させて、またこのゲームも逆転された。継投ミスが目立ち、ロバーツ監督の采配批判だけでなく、解任を求める声でSNSが炎上した。ロバーツ監督が珍しく、リリーフに失敗したスコットに苦言を呈したこともあった。
 だが、ロバーツ監督は、前日のゲームでは、負傷者リストから復帰した佐々木、今季限りで引退するレジェンドのカーショーを6年ぶりにリリーフ起用するなどのウルトラCを繰り出して優勝へ王手をかけた。
「ブルペンも、攻撃陣も見事なチーム一丸の勝利だ」としたロバーツ監督は、「先発の由伸はいうまでもなく素晴らしかった。彼の成長とこのチームのエースであることを誇りに思う」と、重要なゲームで得点を許さず、シーズンを通じてローテーを守り、チームで勝ち頭となる12勝8敗、リーグ2位の防御率2.49の数字を残した山本の個人名をあげて絶賛した。
 続いてロッカールームにビニールが張られ、歓喜のシャンパンファイトが行われた。

 
 ロバーツ監督は、大騒ぎが始まる前に、全ナインへスピー―チを行った。
「おめでとう」と祝福の言葉から始めた指揮官は、「これは第一歩だ。これからの5週間が君たちの人生が最も重要な期間になる」と、30日(日本時間1日)から始まるワイルドカートシリーズに向けて気合を入れた。
 そして「君たちに望むことはただひとつ」と、そのポストシーズンの戦いに向けてのメッセージを送った。
「お互いのためにプレーをし続けてくれることだ。これから重要なのは。チャンピオンとして最後まで戦いぬき、優勝するために必要なことを全員がなんでもすることだ。この部屋にいるみんな、この部屋の外にいる多くの人がこの瞬間を築きあげてくれた。だから、鋭さを失うな。この5週間、鋭さを失ってはダメだ」
 チームプレーの大切さを改めて強調したのである。
 地区優勝は果たしたが勝率で中地区優勝のブリュワーズ、東地区優勝のフィリーズに及ばす、ワイルドシリーズから参戦しなければならなくなった。昨季の世界一はディビションシリーズからのスタートで手にしたもの。ワイルドカードは2戦先勝の3戦方式だが、昨季は11勝で良かった世界一への勝利数は13勝が必要になる。
 ロバーツ監督は、山本、グラスノー、スネル、シーアン、カーショー、そして大谷と6人揃っている先発陣を4人に減らし、シーアン、カーショーをブルペンに回す方針を固めているようだが、そういう配置転換は、各自がチーム貢献の意識を高く持っていなければ成功しない。短期決戦ゆえに打線も打てなければ大胆なメンバー変更もあるだろう。
 シャンパンファイトの終盤にロバーツ監督は、もう一度、中継局のインタビューに応じて「どの年もそれぞれ違うが、これまでの道のりを降り返ると今回ほど厳しい道のりはなかった」と、今季を振り返り、シャンパンファイトの前にナインに伝えた厳命の意味をこう説明した。
「古くから言われているが、そういう時こそ仲間同士が互いに高め合うことが必要なんだ。逆境を乗り越えたことでチームは間違いなく成長した。我々は最高の野球をしていると感じている。でも、本当の戦いはこれからだと理解している。信仰と家族を除けば、これからの5週間が重要な時期だということ。これまでの実績は一切関係なく、ただお互いのためにプレーし、信頼しあい、優勝をめざして戦うことがすべてなんだ」
 そしてこう続けた。
「選手たちとの信頼関係は築けている。選手たちはタフで才能もある、あとは全員がグラウンドでそれを実行するだけ。ポストシーズンでは13試合を勝ち抜く覚悟。そして、5週間を戦い抜く覚悟が必要だ。毎日、一瞬一瞬、一球一球が最も重要になる」
 ワイルドカードシリーズからの参戦になったが、「正直なところ、どこでプレーするか、誰と対戦するかは問題ではない。10月を戦い抜く覚悟はできている、それが我々の姿勢だ。誰が相手であろうと準備は万全だ」とロバーツ監督に動揺はない。
 現時点でのワイルドカードシリーズの相手はメッツとなっている。

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