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逆転TKOでライト級の新人王となった出畑力太郎がMVP(写真・山口裕朗)
逆転TKOでライト級の新人王となった出畑力太郎がMVP(写真・山口裕朗)

「またとんでもない怪物が出てきた!」全日本新人王MVPは逆転TKO勝利の高校3年生の出畑力太郎…父は正道会館の師範でK-1出場もした全日本優勝経験者

 プロボクシングの「第72回全日本新人王決定戦」が20日、後楽園ホールで12階級に渡って行われ、ライト級で2回2分35秒に逆転TKO勝利した現役高校生の出畑力太郎(18、マナベ)が大会の最優秀選手賞(MVP)に輝いた。また敢闘賞にはスーパーバンタム級の市原涼(23、黒潮)、技能賞にはフェザー級の謝花海光(20、M・T)が選ばれた。

 

父の力也さんは全日本空手道選手権の優勝者でKー1出場経験もある猛者だ

 「あしたのジョー」に憧れて“昭和な高校生”

とても18歳には見えなかった。
「よく言われるんです」
 風貌もそう。まるでタイトルホルダーのような落ち着きだ。
 亀田大毅が会長を務めるKWORLD3は、3人も今回の全日本新人王に送りこんできた。24歳の守屋龍之介はハートのあるファイターだった。ゴングと同時にラッシュを仕掛けてきたが、出畑は慌てない。
「(これまでの試合の)動画を見て来るだろうと思っていました。ムキに打ち合わずに冷静に。カウンターを取れると思ったんですが狙いすぎた」
 左フックや右のクロスのカウンターを何度も放ったが不発。2ラウンドに逆に右のストレートを浴びて人生初の痛恨のダウンを喫した。
「気が付いたら膝をついていた。でもフラッシュダウン。すぐ立ち上がってしまったたんですが、振り返ると(セカンドの)みんなの顔が見えて“落ち着け”“落ち着け”という声も聞こえた」
 冷静だった。
 なぜなら試合前に父の力也さんからその試合展開を予言されていたからだ。
「ガンガンくるから、もしかしたらダウンを取られるかもしれない。でも慌てて立たない。回復してから立ち、そのラウンドを捨てていいからな。倒せるパンチがあるから次のラウンドで倒し返せばいい」
 それもそのはず出畑には最強のDNDが備わっていた。
 父の力也さんは、2000年の全日本空手道選手権の重量級を制したことがある元日本王者で、現在も正道会館而今会の師範代。当時の支部長が、あの佐竹雅昭で、正道会館は異種格闘技に積極的に参戦していて出畑さんも、K-1のリングに2度立っている。ちなみに2002年のデビュー戦では滝川リョウに判定負け、第2戦は2003年の横浜アリーナで大石高亨にまたしても判定負けをした。
 出畑の逆襲が始まる。チャンスとばかりにラッシュをかけてきた守屋に美しい半円を描いた右アッパーを突き上げてダウンを奪い返したのだ。大好きな劇画「あしたのジョー」で、力石徹が矢吹ジョーを仕留めたのもアッパーだった。
「クロスをもらわないようにね(笑)振り抜くようにして打つ」
 それでも「入ったけど効いていないと思った。まだいくつもりだった」という。
 守屋が立ち上がってくると今度はショートの右ストレートを打ち下ろした。いつも練習で「ショートに」と口を酸っぱく言われている。 
 ただストレートには流れる悪いクセがあり、父と共に下半身を鍛え、その修正に取り組んでいたパンチでもあった。
 2度目のダウンを奪われた守屋は、それでも立ち上がろうとしたが、足がよろけてレフェリーはTKOを宣言した。
 またボクシング界にとんでもない怪物が出てきた。
「こんな試合はしたくない」
 それが本音。
「(矢吹)ジョーみたいに倒されてもあきらめないことがかっこいいと思っていたけれど、あれはよくないなと思った」
 しかし、劇的なファイトが支持され、東日本新人王決勝に続き、MVPを獲得した。
「狙ってもないし取れるとは思っていなかった」

 

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